なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

チキタ★GUGUその2

バケモノ呼ばわりされて、嫌われていた頃は
年中腹ペコだった。
でも、チキタと百年始めてから、どうしてだろう。ちっとも腹が減らない。だからニッケル、ありがたいけど、当分は満腹だよ…





お前の親どもはとくにバカだった。
たった一人のお前のために命を投げ出したんだ。大喜びで。

ああ……なんて人間って、バカなんだろう

どいつを見ても、なんだか……お前に似ててねぇ。殺す気になれなくって……

二人の中には、見つけたんだね。チキタ。お前はクリップにこの間こんなものを食べろって言ったけど。こんなもんでも生きてるんだよ。だけど、この子の絶叫が聞こえた?

ラーラムデラルにもね、まだ聞こえないんだ。聞こえないだけなんだよ。

みーんな、毎日いろんな命を殺して殺して生きていく。いつかラーラムでラルがお前の声を完全に聞き取れるようになったら。ラーラムデラルの中に、私達を、見つけてくれるね。ハイカって娘の中に私達を見つけてくれたように。クリップの中にも、そしてオルグの中にも、いつか私達を見つけてくれるね。

いつもいるよ。お前のそばに…

最初から怖くない。こいつはあかんぼうみたいなもんだから

どうすんだよ!?さみしいなんて、まるで人間みたいになっちまって。人食いのくせに!

最初の夜、野郎の一人が俺をおさえつけながらこういった。「これは復讐だ。お前の母親は俺の兄弟の敵だから」。そいつの小さい弟は、俺の母親に殺されていたんだ。だから、俺も仕方ないと思った。おれがこうして痛い目見るのも仕方ないって。=復讐するのは当たり前だって

なのに、その妖は、人間の敵なのに。俺の母親の仇なのに、いったいどうして、いつの間におれ、そんなことどうでも良くなっちまったんだろう……わかんないよ

くちをきいたことのないもの同士が言葉をかわし、殺してあるとか言ってた者同士が暖めあっている。

ニッケルとキサス

あいつ、一週間も立たないうちに、今度はニッケルのところへ通ってたやつらに手を引けっていい出して、全員と渡り合ったんだぜ。ご自慢の顔に火傷までおってさ。

ところがやっと自分ひとりのものになったと思ったとたん、ニッケルのやつがチキタのところへ転がり込んでよろしくしてやがる。それでキサスはチキタを殺したいのさ。

恋ってのはバカなもんだなぁ

もともとキサスくんはニッケルにあこがれてた。弟の仇の「息子」だったから恨みもあったけど、本人の罪ではないし、ニッケルのことは尊敬してた。
だけど、女だってことがわかって、しかも保護者が死んで、ニッケル自体も弱ってて……いろんな条件が揃ったときにタガが外れた。

それで襲ってしまった。その後ニッケルのことが好きだと自覚して、周りの連中からニッケルを守ろうとしたけど、そりゃもう手遅れだよね。

まったく、どいつもこいつも醜悪だ。自分勝手にやりたいほうだいやらかして、後からこんなはずではなかったと泣きやがる。卑怯だと思わないのか

このセリフは自分に向けて言った言葉だよね。そして、その後無理やり襲ったニッケルは妊娠し、流産したことを知ると。

知らなかったよ。取り返しの付かないことって、アルんだな……

もう二度とお前の前には姿を表さないから元気で

ニッケル

自分の命が大切でない人間なんて、他人の命を疎かにする人間よりもずっとずっと始末が悪い。やっぱり初めてあった時感じたとおりだな。お前はラーラムデラルよりもずっと危険だ。

「死んでもいい」って思ってんだろ?最愛の弟や母親が死んで、お前自分ももう「いつ死んでもいい」って思ってんだろ?

ニッケルかわいいなぁ……。だからこそツライ。

「チキタ★GUGU1」

「小林さん家のメイドラゴン」が好きな人にこの作品おすすめする、というのはダメだろうか……。



あいつらはずーっと迷っているんだよ。ずーっとわからないんだ。一体自分が人間を憎いのか恋しいのか

人間はおかしな生物でね。
時々人間以外の生物とも家族とか友人とかになれるんだよ

「どうしたらいい?人間と家族や友人になるには」
「話しかける。時々触る。これがポイントです
 これを繰り返してゆけば、そのうち人間は勝手に
 あなたの家族や友人になってゆくでしょう」

てめーら。たった百年生きるのも難儀な弱虫のくせに
アホなことにうつつ抜かしてんじゃねえ。
せっせと生きろい!!

テレてるのか?自分のエサ相手に。赤くなったりして、まるで人間だな

ヒナが何羽いた?3羽か。じゃあジャストじゃん。人間の命もあの赤ん坊のでちょうど3つ目。これであいこだ。

君はあの鳥が一体いつ命を失ったかわかるかい?きみが鳥の傷に気づき、その血に痛ましい、と心を寄せた時。鳥はもう死んでもいいと思ったんだよ。君の気持ちに気づいて、あの鳥は死んでいったんだ。どんな怪物でもね、「わかってもらえる」ってことにはすごく弱い

百年ってね……そういう時間なんだよ

私は知らなかった。自分の幸せが、他の人間にとってどんなにおぞましいものかということを。私たちはまるで全ての人間の敵のようだった。近隣の村人も、戦闘中の両国の兵士たちも、誰ひとりとして私達を許さなかった。

「許しておくれ。全部私達が悪かったんだね。人の道を大きく踏み外してしまったんだもの。でも、そうしなければ生きていけなかったんだよ」

私は、母の体を口にすることはできなかった。それは愛情や罪の意識なんかとは関係なく、もうすでにその時知っていたからだ。自分が何かを食べたり飲んだりすることだけで命を繋いでいるわけではないということを。

どんなに食べるものがあったってね。あの時お前に会えなきゃ、おれはあのまま死んでたんだよ。だって、ひとりぼっちだったんだから。誰だって、他の誰か無しで生きていくことはできないだろう。言葉とかぬくもりとか、何かを分け合う誰かが……

多分、そうせずにはおれないんだよ。俺はこれからも狼から人を守ろうとするし、ちょっとでも言葉をかわした人間があんなになればまた泣くし。

だけどそれは狼やお前らのような人食いが全滅しちゃえばいいなんてこととは違うんだ。だって俺は狼も、それからお前のことも好きなんだよ。

「俺と一緒にいたからあのおじいさんとおばあさん死んじゃったのか」
「それはお前のせいじゃないんだよ、シャルボンヌ!」
「そんで…これからも、ずっとこうなんだ……」
「シャルモンヌ」
「そんなら、もう、いいや。もう……いいや」

人を食べると、体が温まって幸せな気持ちになる。でも最近はあんまり人を食べてないな。そっか、腹が減らないんだ、最近

そうだ、チキタと一緒にいると、なんだかいつも体があったかいんだ。そんで最近全然腹が減らないんだなー、俺。

もうお前のことはよく知ってる。家族みたいに。
どうしたらいいんだろう。無邪気で残酷なお前を知れば知るほどどうしたって、もう憎めない。やっぱり俺はこいつを憎めない。

ジャンヌ・ダルクについて⑥ 「傭兵ピエール」

これはまぁ異端の物語なので、他の作品を一度見た上で純粋なフィクションとして楽しみたいやつ。

ジャンヌ・ダルクに恋人兼参謀がいて、いろいろすったもんだしたあと途中でジャンヌを捨てて去るものの、最後にジャンヌが火刑にされるところに戻ってきて……という荒唐無稽なお話です。すごいシンプルなお話ではあるんですが、やはり最後の展開は今読んでもぐっときますよね。

この作品いろいろ見所あります。
オルレアン包囲戦の詳細な描写もそうですし、「みんな戦に疲れてた」というイメージが強い百年戦争の物語においてやたらと豪快に、しかも楽しげというか活き活きしてる主人公たち傭兵の描写それ自体がまず他にないわけですが、やはり、神聖化されがちなジャンヌダルクをもっとも人間味たっぷりに描いているのが特徴ですよね。 ピエールがジャンヌを抱かなかった理由って今でもわかるよーなわからんよーな。

ジャンヌ・ダルクについて⑤ 安彦良和「ジャンヌ」(後編) ルイ王太子との対決

なぜそうなのかっていうことはきかないで。
わたしにもそれはわからないの。
でも、神様がそう望まれているのよ。
この戦争はもうおわりにしなければならないって。
でも、人間たちの勝手な欲や、恨みや、意地にまかせていたのでは決着がつかない。
だからわたしに仕事をお命じになったの。

ロッシュの戦い

①シャルル7世の愛人アニエス・ソレルがいるためこちらに移動。
 先に王太子軍がロッシュを確保する。


王太子派ブルボン公の騎馬部隊5000 VS リッシュモンの部隊槍兵8000。
 本来は王太子軍の方が総勢で優勢であったのに、王太子が独断でロッシュに赴いたため大敗。
 ルイ王太子はオーベルニュへ敗走。

③リッシュモンから、ジャンヌと相対した時の話を聞く。


アランソン公がブルターニュ領バルトネーに侵攻

①サン・マクサンでの戦い
 エミールは使者としてアランソン公のもとを訪れ、アランソン公からジャンヌの話を聞く。
 アランソン公はジャンヌの件でシャルル7世に失望していた。

②アランソン公に捕らえられ、オーベルニュへ連行される。


③アランソン公は戦闘に破れ降伏。
 この間、ブルボン公、オルレアン公、ラ・トレモイユ、ブルゴーニュ公は全く動かず。


ジャンヌの異端審問の再現

「どちらかを選べ。男の服と女の服だ。素直に女に戻って女の服を着るなら情けをかけてやろう。だがこのうえまだ男のふりをしたいというのなら、それはどこまでも神の定めた掟に背き、この俺にも逆らうということだ。その時は…」

「あなたも、よもやジャンヌが女の服を着ることを拒み、そのために火あぶりにされたのを知らないはずはないでしょうに!」

「無論、知っているさ!だからお前にもそれをしてみろと言っているんだ!ジャンヌを気取るお前なら、服と一緒に生き死にを選ぶこともマネられるだろうよ!俺はジャンヌが好きだ!おれは多分ジャンヌとうまくやれただろう!ただし、戦が上手でイギリスを憎んでいるジャンヌとならばだ!神がかりで説教じみたジャンヌなら用はない。それよりも十万の軍隊とハガネの武器をおれは味方にして、神の祝福する勝利をもぎ取ってやる!
 ジャンヌは死んだ、灰になった……それで何が変わった!?イギリスは出ていったか!?神が正義を実現してくれるなら、聖書の民はもっと幸せだったろう!同じことだ!力以外の何に跪けと言うんだ!」

ジャンヌの出現に、みんな希望を見た。しかし、彼女に見た夢が果たされなかった時、ジャンヌなど最初から信じていなかったラ・トレモイユや、ジャンヌを評価しつつも依存しなかったリッシュモン以外は希望を持ってしまったがゆえにそれ以上の絶望を感じてしまった。バブル発生からの崩壊だわね。

ジャンヌを見殺しにしたこと、というかジャンヌがグランス全体の勝利をもたらさず途中でリタイアしたことの恐ろしさは、神というものを信じていたこの時代の人達に耐え難いものだったであろう。だから、ジャンヌロスに陥ったり、必死にジャンヌの信じた神を否定する。あるいは、シャルル7世の無能さを強く責める。そうすることによって、ジャンヌそのものを神聖化していった。


ジャンヌ以外の少女は、はたしてジャンヌと同じ苦しみに耐えられるか

①ジャンヌの最後の告解を聞いたマルタン・ラブニュ修道士と面会する

神は、信仰の深さ浅さで人を選んだりはいたしません。神の御心を推し量ることは出来ません。ただ祈り、願うのです

そして信じたいのです。愚かしく罪深い人間の性よりも、神の御意思がお強いということを。人の理性が、悪い欲望に屈することがいかに多くとも。いつかはその理性の正しさの支えとなる我々の力を超えた力が、聖なる御意思としてこの世に示されることを私は信じたいのです。
イエス・キリストとジャンヌに祈ります。あなたが救われますようにと!

ジルドレは、人の弱さに直面し、さらにジャンヌの死に直面したことで神の救いを信じることもできなくなって崩壊した。しかし、本当に神を信じるなら、ジャンヌが死んでも尚、信じ続けなければならないのかもしんないね。そんなの人にできることかどうかわからないけど



1453年百年戦争終結後の1455年にジャンヌ復権裁判

途中王太子ルイ(後のルイ11世。1423-83)との不和や、愛妾アニェス=ソレル(1422-1450。女性として初めてダイヤモンドを身につけたとして有名)の政界介入などもあって苦しんだが、シャルル7世は、長く心残りであったジャンヌ=ダルクの復権において、1455年、勅命によってジャンヌ復権裁判を開かせることにした。

これにより、翌1456年ルーアンで、ローマ教皇カリクストゥス3世(位1455-58)は、1431年のジャンヌ宗教裁判の無効を宣言、無罪と復権の判決が出、ジャンヌは名誉を回復した(時が経ち1920年にはローマ教会で、ジャンヌを聖女に列し、フランス国民の英雄として讃えられたのであった)。

1920年 第一次世界大戦期に愛国の象徴として「聖人」として都合よく担ぎ上げられる



ジャンヌ

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というわけで、ようやくこの漫画を読み切ることが出来ました。このマンガをパット読んでもろくに理解することが出来ず、その背景から理解したいと思って百年戦争関連のWikipediaやら新書やら他のマンガを読んで、ようやくおぼろげーに見えてきました。

この時代は本当に激しい時代だったのだなと思います。

ジャンヌ・ダルクについて④ 安彦良和「ジャンヌ」(前編)ジャンヌの死後からスタート 

「教えてジャンヌ!わたしにわかるようにはっきり答えて!なぜあの人達はわたしあなたの味方ではないの!?なぜあなたがいのちをかけて守ったシャルル国王様がひとりぼっちなの?そして、なぜあなたを見殺しにした王陛下を助けろというの?」
「言ったでしょう、なにがあっても……って。なぜかわからなくても、正しいことは信じ続けなければならないの」
「そんなのはダメ!そんなことなら……わたしは耐え続けていくことは出来ない!拷問されるかもしれない。殺されるかもしれない!それも耐えろというの!?なんだかわからないことのために!?そんなことできない!!」
「わたしは耐えたのよ。エミール。耐え続けてただお告げに従って……」
「そして、あなたは火あぶりになったのでしょう?私には無理!できない!!わたしはただの女です!あなたとは違うんです!ジャンヌ!お願いだからこれからは私を好きにさせて!わたしは自分で考えたいの!けっして悪いようにはしないから!」
「だめよ、エミール!なにもわかっていないのね!自分の力で一体何が見えるの!?人の力が何?自由が何?そうやって鎖で縛られてみてもまだわからないの?あなた以上のものに、あなたは従いなさい!!

この作品ではジャンヌは物語開始時点ですでに火刑で処刑されている。つまり生きているジャンヌは登場しません。かわりに主人公はロレーヌ公の妾(アリゾン・デュメ)の娘エミリー。ロレーヌ公が死んだ後は、素性を隠してボードクリール卿の養子になり女ではなく男「エミール」として育てられた。ジャンヌと似た運命を選んだ少女が、ジャンヌの足跡を辿っていく、という話。似た存在からジャンヌを語らせることにより、「ジャンヌ」というのがいかに特異点的存在であるかが浮かんでくるという構成ですね。

時代背景 「1440年のプラグリーの乱」発生時点からスタート。

1431年 ジャンヌ ルーアンにて処刑される
1431年 ブルゴーニュ公とフランス王家との間に休戦協定
1435年 アラスの和議が成立し、フランス王家(アルマニャック派)とブルゴーニュ公との間に同盟関係。
1439年 オルレアン三部会。フランス王国は軍の編成と課税の決定を行うが貴族が猛反発。
1440年 反発する貴族によるプラグリーの乱
1445年 常設軍「勅令隊」が設立
1449年~ フランスが一気に攻勢をかけてルーアン→フォルミニー→ボルドー→カスティヨンの戦いで勝利
1453年 百年戦争終結


アラスの和議までは

・シャルル7世(アルマニャック派)&ブルターニュ公ジャン5世&リッシュモン
・ブルゴーニュ公フィリップ

という感じだったのですが、その後は

・シャルル7世 VS 反シャルル派(アランソン公ジャンなどが王太子を擁立)
で争いになりました。

ジャン2世 (アランソン公) - Wikipedia

百年戦争後半にフランスがイギリスに勝てるようになってきたのはフランスの古い封建領主たちの騎兵中心の戦術から国王直轄軍&大砲による中央突破戦術へのシフトしたことが理由であり、この関係で、中央集権が進みつつあったのですね。こうなった時に、軍のトップであるリッシュモンに権力が集中しつつあったため、反動でこういう内乱状態になりました。 ぶっちゃけ、この漫画、このあたりの説明がほとんどないため、知識がないと出だしで躓きそう……。 


ジャンヌの生家 ドンレミ村訪問

この村で、エミリーはジャンヌの亡霊を見る。

①ジャンヌは村ではジャネットと呼ばれ、機織り作業をしていた。
②妖精の木の下で天使さまと出会った話を聞く。
③ジャンヌから、シャルル7世をなんとしても守れと告げられる。


オルレアン城訪問

①「ジャック・ブーシェの家」を訪れる。
②反シャルル7世陣営の面々と遭遇する。

王太子ルイ
・ラ・トレモイユ
・アランソン公ジャン2世
・ブルボン公
・ラ・イール
・ポトン・ド・サントラーユ
・オルレアン公シャルル・ドルレアン

③囚われの身にあうが、辛くも脱出する。

私はあの時…思わずジャンヌにすがったんだもの。神様に、ではなくジャンヌに。
いけないことだけど、神様。
わたしの信仰の心はまだそのくらいのか弱いものなんです。

ロレーヌ川を下ってオルレアン公領→ブロワ伯領→トゥーレーヌ伯領→アンジュー公領へと移動

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ジャンヌがシャルルと面会したのは、アンジュー公領のシノン

①アンジュー公「ルネ・ダンジュー」がジャンヌ・ダルクの仕掛け人であったことがわかる。
 (ロレーヌ公はアンジュー公の義父であり、ボードクリール卿はロレーヌ公の配下)

王太子ルイがトゥーレーヌ伯領に侵入。

③トゥーレーヌ伯領内にてシャルル7世と面会。

④シャルル7世とともに、アンジュー公領のアンジェに移動。リッシュモン大元帥と面会。
 (シャルル7世がリッシュモンを恐れ、煙たがっている様子が描かれる)


ジル・ド・レの館を訪問する

要するに金が無いのだ。それに尽きる。兵を増やすには多額の給料が要る。ラ・トレムイユが散々浪費したために、国の金庫は空同然になっておる。

①資金の融通を依頼するために、大富豪である「ジル・ド・レ」の元を訪れる。
 
②ジルから、戦場でのジャンヌの話を聞く。


ちなみにジルは、この直後に別件で逮捕されます。

1440年5月15日、所領を巡る争いからサン=テティエンヌ=ド=メール=モルトの聖職者を拉致・監禁したことから、告発され捕らえられる。この領地は1438年にジルがジャン5世に売っていたが、ブルターニュから派遣された家臣が厳しく税を取り立てたことに憤慨したジルが暴挙に出たのだが、これはまさにジャン5世の思う壺に嵌った。直ちに家臣のナント司教ジャン・ド・マレストロワがジルの身辺調査に乗り出し、7月29日に告発状が公布され、9月15日に逮捕されたジルはナント宗教裁判所へ出頭した。

ジャンヌがシャルル王太子と面会したシノン城へ

①シャルル7世軍とルイ王太子軍がいよいよ対決。緒戦はトゥール近郊の戦い。

②ロッシュへ移動






おまけ 百年戦争というあまりにはた迷惑なお家争いについて

なぜフランスは一つになって、イギリスに勝たねばならん?なぜブルゴーニュやアルマニャックやブルターニュが別々の国であってはいかん?ウィリアム征服王以来、王家の血脈が通じ合うイギリスとフランスが一緒になってはなぜいかん?そのどちらを取っていても、戦は多分とうに終わっていた。違うか?お前のような理屈では答えられまい。だが、俺に言わせれば簡単だ。強いものが、勝つんだ。神は裁かない。ただ勝者を祝福する。勝者が神をたたえ、勝ち取った富で点にも届く聖堂を建て、領地を与え、聖職者たちに金ピカの衣を着せれば、紙は全てをよしとする。

ジャンヌ・ダルクについて③ 「ルーアン」パリ大学からみたジャンヌ

パリ大学は明らかにジャンヌを嫌悪していた。

わけても聖職者ならぬ平信徒が、それも呪われた性である女が、神意を代弁できるかのごとく振る舞う思い上がりに関しては、かくいう私も位置論考をものして、世に問うたくらいである。

ジャンヌは割りとでしゃばりで「乙女戦争」で取り上げられているフス戦争に関して、フス教徒に「お前らは間違ってる」みたいな文書を送ったりもしてる。この当時はただでさえ聖職者が特権意識を持っており、聖職者は男尊女卑の極みのような人が多かったので、そりゃ女性が活躍しようものならそれだけで嫉妬することもあったでしょうね。


「魔女狩り」とか見るとホントキリスト教の当時の聖職者はひどすぎるなと思います。当時、聖職者としては堕落してるくらいがちょうどよくて、コンスタンツ公会議みたいな、世俗まみれまくりの会議の結果を正義とか思って真面目に異端者を焼き殺してた聖職者とかは、アイヒマン並に悪逆非道と裁かれるべきな人多いと思いますけどね……。キリスト教が中心でない歴史がもし今後の人類に存在するなら、キリスト教の過去は人類の暗黒面として取り扱われるかもしれませんね。

まぁそんなわけで、パリ大学の人間の傲慢ぶりが嫌というほど描かれているのが面白い。異端審問官の「コーション司教」は有名であるけれど、彼は元パリ大学の総長であり、かつコンピエーニュがあった「ボーヴェ司教区」の管轄だったらしいです。審問自体はルーアンでやったわけですが、ルーアン司教でもない彼が異端審問をつとめたってことですね。

一人の女性を捕まえで何度も処女検査を行ってるこの時代の聖職者たちの処女厨ぶりは異常

ポワティエでも、パリ大学主催の予備審問でもやってるのね。ただ、どちらにおいても純潔は保証されている。

この狂った聖職者は、女性を、男を誘惑するケガレた性と呼びながら、
処女は無茶苦茶神聖であり、悪魔を弾き返す力を持ってるというわけだから、処女厨ってレベルじゃねえよ。
ああでも、聖職者は建前上童貞が多いからそういうもんなんですかね。
この聖職者たちの悪魔の考え方は、割りと
童貞こじらせた非モテ男が、女の処女を奪う男をヤリチンって呼ぶ発想にスレスレであり、
ミソジニーこじらせた人たちは、今からでもこの過激派たちに弟子入りすればよいのでは。


当時のパリ大学の聖職者は一生懸命「啓示」の定義を考えていたらしい

ジャンヌが神の声をきいたということを否定したいが故に彼女が聞いた声は悪魔のものであり、つまり彼女は悪魔だと一生懸命主張しているこの聖職者、今の基準で考えると中二病なんて可愛いものだと思う。こんなんで人々から寄付をもらっていきられる職業って羨ましすぎるんですが。


①第一回~第四回審問  検事ジャン・デスヴィエ
 第四回目の時に、声の正体は「大天使ミシェル」であるという証言をジャンヌが行う。

②第五回目~      検事ジャン・ボーペール

尋問におけるジャンヌの応答の見事さはバーナード・ショウの戯曲に取り上げられるほど

はっきりいって、元々が無理矢理な話で証拠など無いわけで、難癖つけようと思えばいくらでもできる。
そんなわけで聖職者が無理難癖をつけてジャンヌを嘘つきの魔女に貶めようとするなか、ひらひらと交わすジャンヌの答弁が面白い。

考え方がおかしいが、やたらと糞真面目

ただ、この人達は、頭がおかしいかわりに勤勉で真面目である。
たとえ国からさっさとジャンヌを魔女認定しろと圧力をかけられても、彼らの論理でちゃんと勝利を収めるまでは延々と戦い続ける。そのために一ヶ月以上ずっと戦う。

とはいうても、コーションあたりは世俗に染まっているので、しびれを切らして、論理ではなくジャンヌを裁判外で傷つけ、弱らせて負けを認めさせるという卑怯な手を使った、というのが現在の通説。


結局キリスト教はすべての面でジャンヌを裏切った

むしろ、ジャンヌを殺すためにキリスト教の教義をフル活用(悪用)したのだから、この件はキリスト教黒歴史そのものでしょうね。ジャンヌが魔女でない限りはとうてい許されないことをした。のに、20世紀になってからジャンヌの名誉を回復した。どう落とし前つけるんだよって感じですよね。

キリスト教徒として生きる限り、あの女を救うことが出来ない。なんたる皮肉か。そのことを笑えないとするなら、もうほかに祈りようはなかった。ええ、神様。そうなのです。
「あの女を救うために、それなら悪魔を遣わせてくださいませ」

壊れたwww

ジャンヌ・ダルクについて② 「ジャンヌ・ダルクまたはロメ」ジャンヌ・ダルク私生児説をベースにしたお話

「ジョルジュ・ラ・トレモイユ」視点の腹心「ルイ・クルパン」という人物の視点からジャンヌを語る作品。ちょっとマニアックw

ジョルジュ・ラ・トレモイユについて

ジョルジュは反リッシュモン大元帥であり、リッシュモン大元帥はどちらかと言うとジャンヌ寄り扱いをされることから、結果として反ジャンヌと見られがちな人物。

ジャンヌ登場後、フランスが優勢になった後でも英国との休戦をシャルル7世に持ちかけたり、ジャンヌが捕虜になったときも身代金を払わず見捨てるようにそそのかした、みたいな感じで、ジャンヌ・ダルク好きな日本人から見ればマイナスイメージが強いかと思います。実際この本もそういう雰囲気で取り上げられてますね。

宰相として、無気力なシャルル7世から国政に関する一切を任された人物。悪く受け取るなら、三国志時代の蜀において、劉禅をたぶらかした悪宦官として知られる「黄皓」みたいな感じでしょうか。

ジャンヌの後ろで誰かが糸を引いていたのではないか、という疑惑について

そんなジョルジュは、自分の権力基盤が王の信頼に依存していることをよく理解しているため、警戒心が強いです。町娘とはいえ、いきなり現れてはシャルル7世の寵を受けたジャンヌ・ダルクにかなり猜疑心を持つ。ジャンヌ本人はともかく、「ジャンヌの後ろに黒幕が隠れているのではないか」ということを考えるわけですね

彼が真っ先に疑ったのは、神の啓示とかそういう話ではなく(それは誰かの仕込みだろうと考えていた)「ジャンヌ・ダルクが馬に乗れること」。宮廷で堂々と振る舞える、ということ。この当時貴族の男でもない人間が馬を乗りこなせる、ということ自体が不可解だと考えた。

むしろ受けたのは教育だ、とジョルジュは思う貴族としての教育だ。それも多分に男としての教育だ。やはり神ではなく、今日の日のために、あらゆる準備を密かに進めた黒幕がいるのだ。

これに関しては、創作ではあるものの流血女神伝において、実際にジョルジュが危惧したそのまんまのストーリーを読んだことがあるのでかなりリアリティを持って想像することが出来ました。

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そんなわけで、黒幕としてリッシュモンの他、オルレアン公、アランソン公、ブルボン公などを疑って、念のため身辺調査をさせることになります。



ジャンヌ・ダルクの故郷 ドンレミ村(シャンパーニュ地方の東端)でジャンヌの「人物について」の聞き込み調査を行う

英仏戦争の結果、周囲はすべてイギリスに支配され、飛び地として孤立している地域。領主の居城「ヴォークルール城」もイギリスに包囲され、ドンレミ村も何度となく襲撃され略奪にあったらしい。

で、パリがとっくにイギリスに恭順しているのに、この地域は孤立した状況にあっても、フランスへの忠誠心が高い土地柄であったと。で、土地の人もなぜかジャンヌのことを聖女と信じているようであった、と。

その後、史実としても知られている「ボードクリール」に一度門前払いになった後、徐々に話題となり、「ロレーヌ公」と会った後に、ボードクリール公がわざわざ兵士に護衛させて王のもとに送り出したこと、ポワティエ審問のことなんかについて語られる。

ヴォークルールからシノンにいる王の元に向かうまで何があったのか

ルイはまずヴォークルール城から王のもとまでジャンヌを送り届けた城兵たちに聞き込みを行う。

神の遣いだなんて名乗るだけあって、この世にはきれいなものしかないなんて本気で信じてる顔だった。汚いものもあるんだって、いや、この世は汚いものだらけなんだって、どうでも俺は教えてやりたくなったのさ。

この当時の男尊女卑は今の比ではなく、女一人が6人の城兵の男と一緒に旅をするという過程はあまりにも常軌を逸していた。これについて、身辺調査を行っているルイは当然邪推をするわけだが……。


ドムレミ村でのジャンヌの評判は……

「できすぎて、なんだか嫌味な子だったわ」
「あの子は、生まれたときから特別だったから」

ジャンヌが村で聖女として振る舞い始めたのは、たった1年前の1428年5月からだったらしい。それにも関わらず、村人たちは唖然とするばかりの急展開にも、妙に納得していた。


ジャンヌダルクの生家を訪れる

ジャンヌの家は、村の中では村長一家であり、地元の名士であり、豪農。
父はジャック・ダルク。母はイザベル・ロメ。地元ではジャンヌではなくジャネットと呼ばれていたらしい。
兄は三人、妹が一人いて、それぞれ「ジャックマン」「ピエール」「ジャン」「カトリーヌ」。ピエールとジャンは、ジャンヌの出立に合わせてオルレアンに出立していた。

ジャンヌは、婚約者アンリ・ポクランのところに嫁がず、親の顔を潰したため、父から勘当されている。(トゥール司教法定に訴えられた記録も残っていた)

→アンリは、「ジャンヌは、村の中に、婚約者のアンリ以外に想い人がいて、夜に幾度となく密会していた」と言うが……


ルイの報告を得て、ジョルジュが出した結論は……

ラ・ピュセルはジャック・ダルクとイザベル・ロメの実子ではない。(○○○の私生児である)

お、これはジャンヌファンなら有名な説の一つですね。この作品では、タイミングから推測して「オルレアン公ルイと淫乱王妃イザボーの間に生まれた私生児である」という推測を立てています。

閑話休題ですが、この当時フランスはただでさえイギリスに負けているのに、内紛を起こしており、特にアルマニャック派のgdgdぶりはほんとにひどい。このせいでイングランド・フランス二重王国状態が発生してるわけです。

アルマニャック派 - Wikipedia

宮廷を掌握したアルマニャック派だったが、1415年にフランス遠征を開始したイングランド王ヘンリー5世を撃破しようとしてアジャンクールの戦いで大敗、アランソン公は戦死、オルレアン公とブルボン公は捕虜となり、ブルターニュ公も弟アルテュール・ド・リッシュモンが捕らえられイングランドに反抗出来なくなり、アルマニャック派は大打撃を受けた。同年と翌1416年に王太子とベリー公も死去、1417年から行われたヘンリー5世のフランス征服にもアルマニャック派はなす術が無かった。1418年にブルゴーニュ派が扇動したパリ市民の再度の暴動でアルマニャック伯は殺され、パリは再びブルゴーニュ派が制圧した

ここからのどんでん返しが面白い。

ここで終わってしまっては、よくある俗説をなぞっただけのチープな展開で終わってしまいます。しかし、ジャンヌはジョルジュのこの推測を突っぱねます。この俗説はこの物語ではジャンヌ本人によって否定されてしまうわけですね。

私の推測が外れたということか。オルレアン公家ではなかったのか。してみると、ジャンヌ・ダルク、またはロメは全体なにものなのだ。

なまじ私生児説は読んだことがあり、てっきりその展開かと思っていたのでかなりびっくりしました。

しかし、ジャンヌはジャック・ダルクの子ではなく誰かの私生児であり、貴族の援助を受けていたことは状況から疑いようもない。しかし一体ジャンヌは誰の子であり、黒幕は誰なのか……とジョルジュが迷うものの、意外なところからあっさり答えが判明します。黒幕の正体はまさかのあの人物。同著者の作品の「傭兵ピエール」「カルチェ・ラタン」にも登場していたかの人物です。佐藤賢一さんはこの一族ほんとに好きだな!!!


黒幕の正体はわかったが、ジャンヌ・ダルクの正体は未だわからず

さて、ジャンヌの「黒幕」の正体がわかったジョルジュは、その「黒幕」のちからを削ぐために戦場においてジャンヌを孤立化・弱体化させる手を打つ。そして、ついにジャンヌはコンピエーニュの戦いでとらわれることになります。これで「黒幕」はもう力を失ってしまいます。


さて、ジョルジュに残された課題はあと一つ。「身代金を払ってジャンヌを救うべきかどうか。それとも見殺しにするか」。

見殺しにすればいいと思いつつもジョルジュは悩みます。なぜなら、「黒幕」の正体はわかってもジャンヌの正体がまだわからないから。ジャンヌの正体は、王であるシャルル7世は知っている、しかし自分はわからない。もしジャンヌの正体が王にとって絶対に見捨てられないほど重要であり、それにも関わらず見捨てるという選択をすれば、ラ・トレモイユは一発で王の信頼を失ってしまう。慎重にならざるを得ないわけですね。



そして、ついにジョルジュは、ジャンヌの正体を悟ります。そして、なぜ彼女が他の人に聖性を感じさせるオーラを持っていたのかも。それを知ったジョルジュは「ジャンヌは絶対に救うべし」と王に進言します。それだけジャンヌの正体は、王にとって重要な人物だったから



さて、それを受けた王の返答は……。




最後の終わり方は「えええええええええ!?」ってなりました。 消化不良感半端ない……。



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やっぱりこの人は長編が面白いかも。。。