ジャンヌ・ダルクについて③ 「ルーアン」パリ大学からみたジャンヌ
パリ大学は明らかにジャンヌを嫌悪していた。
わけても聖職者ならぬ平信徒が、それも呪われた性である女が、神意を代弁できるかのごとく振る舞う思い上がりに関しては、かくいう私も位置論考をものして、世に問うたくらいである。
ジャンヌは割りとでしゃばりで「乙女戦争」で取り上げられているフス戦争に関して、フス教徒に「お前らは間違ってる」みたいな文書を送ったりもしてる。この当時はただでさえ聖職者が特権意識を持っており、聖職者は男尊女卑の極みのような人が多かったので、そりゃ女性が活躍しようものならそれだけで嫉妬することもあったでしょうね。
「魔女狩り」とか見るとホントキリスト教の当時の聖職者はひどすぎるなと思います。当時、聖職者としては堕落してるくらいがちょうどよくて、コンスタンツ公会議みたいな、世俗まみれまくりの会議の結果を正義とか思って真面目に異端者を焼き殺してた聖職者とかは、アイヒマン並に悪逆非道と裁かれるべきな人多いと思いますけどね……。キリスト教が中心でない歴史がもし今後の人類に存在するなら、キリスト教の過去は人類の暗黒面として取り扱われるかもしれませんね。
まぁそんなわけで、パリ大学の人間の傲慢ぶりが嫌というほど描かれているのが面白い。異端審問官の「コーション司教」は有名であるけれど、彼は元パリ大学の総長であり、かつコンピエーニュがあった「ボーヴェ司教区」の管轄だったらしいです。審問自体はルーアンでやったわけですが、ルーアン司教でもない彼が異端審問をつとめたってことですね。
一人の女性を捕まえで何度も処女検査を行ってるこの時代の聖職者たちの処女厨ぶりは異常
ポワティエでも、パリ大学主催の予備審問でもやってるのね。ただ、どちらにおいても純潔は保証されている。
この狂った聖職者は、女性を、男を誘惑するケガレた性と呼びながら、
処女は無茶苦茶神聖であり、悪魔を弾き返す力を持ってるというわけだから、処女厨ってレベルじゃねえよ。
ああでも、聖職者は建前上童貞が多いからそういうもんなんですかね。
この聖職者たちの悪魔の考え方は、割りと
童貞こじらせた非モテ男が、女の処女を奪う男をヤリチンって呼ぶ発想にスレスレであり、
ミソジニーこじらせた人たちは、今からでもこの過激派たちに弟子入りすればよいのでは。
当時のパリ大学の聖職者は一生懸命「啓示」の定義を考えていたらしい
ジャンヌが神の声をきいたということを否定したいが故に彼女が聞いた声は悪魔のものであり、つまり彼女は悪魔だと一生懸命主張しているこの聖職者、今の基準で考えると中二病なんて可愛いものだと思う。こんなんで人々から寄付をもらっていきられる職業って羨ましすぎるんですが。
①第一回~第四回審問 検事ジャン・デスヴィエ
第四回目の時に、声の正体は「大天使ミシェル」であるという証言をジャンヌが行う。
②第五回目~ 検事ジャン・ボーペール
尋問におけるジャンヌの応答の見事さはバーナード・ショウの戯曲に取り上げられるほど
はっきりいって、元々が無理矢理な話で証拠など無いわけで、難癖つけようと思えばいくらでもできる。
そんなわけで聖職者が無理難癖をつけてジャンヌを嘘つきの魔女に貶めようとするなか、ひらひらと交わすジャンヌの答弁が面白い。
考え方がおかしいが、やたらと糞真面目
ただ、この人達は、頭がおかしいかわりに勤勉で真面目である。
たとえ国からさっさとジャンヌを魔女認定しろと圧力をかけられても、彼らの論理でちゃんと勝利を収めるまでは延々と戦い続ける。そのために一ヶ月以上ずっと戦う。
とはいうても、コーションあたりは世俗に染まっているので、しびれを切らして、論理ではなくジャンヌを裁判外で傷つけ、弱らせて負けを認めさせるという卑怯な手を使った、というのが現在の通説。