なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

3×3 eyes 幻獣の森の遭難者後半  「この世界に祝福を」

君に多くの祝福をもらった。
そして君に多くの祝福を上げた。
僕にとって、これ以上の幸せはなかった。
ありがとう、ミチル……

「交換」をキーワードにしてきれいにまとめた作品。完成度満足度ともに高い。
読み返しに堪える作品だと思う。やっぱり私このシリーズ大好きだわー。

 

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以下は、ストーリーのまとめというよりは、自分が気に入ったシーンのまとめ

藤井八雲の憂鬱

まいったな……
パイが無事でうれしい。エキドナの来襲には困惑してる。みちるを人質にされて腹が立つ……。すべての感情が存在しているのに、希薄すぎてこんな時どんな顔をするべきなのかわからない。

闘いに感情は禁物だ。だけど心の中の自分のポジションがマッピングできない。人間性が欠けてしまったままだ。あのサンハーラの戦いから、本当の俺はまだ帰還できていないんだ。ああ、またパイを不安にさせてるな、俺は。12年も、ずっと黙って俺を案じてくれている。

いったい俺は心のかけらをどこでなくしたんだ……

ゲゲイネスがやたらと醜く描かれるが、ヤクモも一緒。形は違えど、どちらも「戦場からの帰還兵が日常に復帰できない問題」のような状態になっている。
パイはすごく心配してるんだけど、死んだ感情ってなかなかどうしようもないよね

ただ、そういう感情の話ではなくて、「物理的」に問題があるわけです。もちろん、その心のかけらがどこにあるのかは、前半まで読んでたらすぐわかりますよね?



哀れな相手であっても、怒るべき時には怒るべき

「大丈夫じゃない!心配だよ。
 こんな時無理して笑わなくてもいいんだよ。ヤクモ。
 パイともう一人の私に。世界に。ベナレスさんに、ゲゲイネスさんに。
 怒ればいいんだよ。パイを心配する場合じゃない!今は怒るときだよ!」

「怒りという言葉は理解している。けどその感情は希薄だ。
 だけど、わかった。
 今は怒るときだ。
 こいつらは、戦乱以外では生きる糧がない。
 万が一世界を支配できても平和を維持する能力を持たない哀れな存在だ。
 俺は心底やつらを憐れむ。が、今は、今こそは怒るべき時だ!

 俺はもうベナレスどころか、あんたにも勝てないかもしれない。
 だが、見過ごすわけにはいかない!!」

憐れな存在だからこそ、ちゃんと怒ってあげたほうが良いときもあると思う。
なんかねー、昔から青○才に説教すると「あんな底辺の人間を相手にするな」っていう態度の人いたけどお前らのほうが絶対に失礼だと思うぞ。



世界を取るか、一人のヒロインを取るかという懐かしい問い

3×3eyesってやっぱり昔の作品だなとは思う。このご時世に、もろにセカイ系的テーマをやってのける。ヤクモ君にやらすわけにはいかないから、ノルマルテくんにやらせる。

「世界は崩壊しない。
 崩壊するのは私の世界だけ。そうでしょ。ノルマルテ君。
 私一人のために全世界を犠牲にしないで!
 ほかの3人を守るためにも、もうやめて」
「それでは意味がないんだ!君を守らなくては!それが僕の望みなんだ!」
「私のためにゲゲイイネスさんと一緒に現実世界を壊すの?
 もう十分守ってもらったよ。だから今度は世界を守って……」

ああ、昔よく見たやり取りだ……。

セカイ系と違うのは、この二人はもはや今の物語では主人公とヒロインにはなれないってことね。まぁそのおかげで二人とも助かったり、二人とも死んだりするわけだけれど。


そしてついにベナレス登場

最初は八雲の力を奪ったゲゲイネスとベナレスという微妙な戦いになるがとにかくベナレスが強すぎる。話にならない。ノルマルテや藤井八雲が協力しても勝てる見込みがない。

というところでやむなくパールバティ登場。

良い意気込みだな小娘。
だが、幻で作られた森の中にいては勝てぬ。
真実をしれミチル!闘いはそこから・・・・・

眼に見える世界は虚構であることが多い。
似非は白日のもと、真実は闇の中を好むでな。
だが気を落とすでない。虚構が不誠実であるとは限らん

ここからはゲゲイネスに代わって八雲が闘う。
八雲は戦闘技術は向上していたが、結局勝てず動けなくなる。

力を取り戻せない八雲に失望したベナレスは、
見せしめに、エキドナを暴走させてパリを滅ぼそうとする。
ここからは、勝つのは無理なので
とにかくベナレスを満足させるための闘いに代わる。

やつのしでかした罪と、その代償が均質では、俺に感動がない。俺は裁判官ではない。心根を重んじている。妥当な量刑よりも、さらに大きな試練と困難を自力で乗り越えてこそ俺の赦免の気もわこうというものだ。

「生」とは現実にあらがうことなのだ。実在せぬ森で安らかに眠る姫にはわかるまい!わかるというなら、現実にあらがって生きるが良い!

ベナレスとの交換はこういう条件になっている。



「幻獣の森の遭難者」とはみちるのこと

なんでノルマルテはみちるに「だけ」執着したのか。あまりにもほかの3人の扱いは軽かった。その理由はというと……。さすがにここはネタバレにもほどがあるのでここでは書かないけれど、みちるの真実は3×3eyes独自のえぐさがあるね。

パパ、ママ……
幼い私にとってはあなたたちが世界のすべてでした。
だから世界は苦痛でしかなかったわ。
浄化されればいいと思っていました。
私は呪っていたの。

世界の苦痛に対して、私は呪いを「交換」して生きていたの。
でも、祝福をくれる人もいた。


パパ、ママ……
私はあなたたちを呪っている暇なんかない。
だって、世界は広かったから。
祝福には祝福を「交換」したいから。

だから……この世界に祝福を!!

最後にすこしだけ救いがあってうれしい。


藤井八雲とサンジヤンの関係はほんといいよね

非常時になればなるほど、人は焦り、恐れ、怒り。
思いやりの交換が困難になる。だからこそ俺は言います。
ベナレスに勝てる気がしなくとも 「大丈夫だ、サンジヤン!」

「過ちのない人生なんてないでしょ。
 清廉潔白なんて気持ち悪いよ。
 おれに謝ることなんてない。
 あなたがたとえ間違えても、俺が戦ってそれを帳消しにします。なんどでも。」

サンジヤンは素直じゃないのであれこれ考えて、結構間違える。でも藤井八雲はそんなサンジヤンのことが好きなんよね。



物語の裏でずっと夫婦喧嘩やってたハーンと葉子の一家

子供の教育方針について見解がわかれ、仲たがいすることに。

母親は娘に、戦うための英才教育をしようとする。
しかし父親は娘の意志を尊重しようとして
むりやり生きる方針を押し付けようとする葉子を叱る。
しかしここで自分を受け入れてくれない葉子がすねてしまう。
母親になっても乙女モード全開過ぎる葉子さんなんだよなぁ……。

最終的にはハーンの真意を知って和解するのだが、
なかなか話をできる状態にならなかった。
ここの部分子供がいる夫婦は読んどいたほうがいいかもね。

「セツ、ベナレスを見てどう思った?
 あれと戦うことになっても、それでも聖魔さまを助けたいか?」

「ハーン!セツに今言うのはずるいわ!」

「いや、いついっても同じだ。
 おれたちに使命なんかない。戦うも戦わないも自分で選ぶんだ。セツ!」

「……む、無理だよ……
 セツにはできない。怖い……
 ごめんなさい……
 パパとママの娘なのに。何もできない。何も……」

「パパだって怖い。それでいいんだ。
 望んでないのに戦わされるなんてのは間違ってる。
 自分で選ぶことが大切なんだ。」

「でも……でも、私は聖魔様を助けたいの」

「戦わないからって何もしないわけじゃない
 ベナレスと戦うのは藤井が一番なんだ。
 だからパパは、藤井のために呪石を作り、
 精の使い方を研究し、新しい術を作るんだ。藤井を信じて。
 最前線で戦わなくとも、
 全力で自分にできることをして俺は藤井に命をかけてる。

 だからセツは今自分にできることをやればいい。」

「でも、何を……」

「パパの精では、呪文が完了しないかもしれない。
 術士として、セツもパパを手伝え!!」

葉子さんさすがもとぱいなだけあって、ほんと乙女やなぁwww