なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

チキタ★GUGUその4  髑髏の土地編

いつだって、人間を呪うのは同じ人間です

ニッケルが死んだ後、クリップがいなくなり、時間がたってハイカもお嫁にいってしまった。チキタだけが時の流れから取り残され、周りからも避けられるようになり、ラーラムデラルと二人きりになる。


そして出現した髑髏の土地。7年前理由もなく村の人間がすべて死に絶えた。



名門サデュース・ザイセルと盗賊の娘バイエ

このバイエの父親が本当にひどいのだけれど、バイエはそのことはすっかり棚に上げて、全部サデュースが気に入らない、ということばかり言うのでクズ確定。

しかももみ消しを狙って朝廷に密告。

サデュースは髑髏の土地で母、兄、姉が全て殺されているので
その犯人を絶対に許さない。

クリップを追いかけて、モロン朝廷のペトラス皇帝を尋ねる

サデュースからみたペトラス皇帝は「薄汚い野心家」

ペトラス皇帝は薄汚い野心家です。
7年前も「この事態は人類全体が対峙せねばならない緊急の課題だ」などと大義をかかげ、結局はどさくさに紛れて「髑髏の土地」を全て自分の管轄に組み込んでしまいました。

ペトラス皇帝はあの件以来、猛烈な勢いで真笑いの少数民族の制圧をはじめました。それはひどいやり方で、そしてどんな非道な行為にもすべて「髑髏の土地」を口実に使ったのです。
あの土地は、自分たちしか立ち入れないようにしてあるんですもの。やりたい放題でした。

ところが数か月前から、いきなりそういったことがぴたりと収まって、かわりにこんどは国中の怪しい人間を朝廷に集めだしたんです。ありとあらゆる手を使って。

外側から見るともともと異常性はよく見えていたということか。




内側から見たペトラス皇帝は「慈愛に満ちた老人です」「なんてラブリィなじいちゃんなんだ。好きになりそうっ」。警戒しているバランスですらこういう形容をする。主人公も「愛らしい年寄りだった」という。ただし……

俺はペトラス皇帝ほど素晴らしい人はみたことない。なんでもできる身分なのに毎日に三時間しかネないで、粗末な食事をしてずっっと仕事して、自分の時間なんか全然ない。宝石も冠も城の宝も全部手放してしまった。なにもかも全部民衆のためだ。あんな人を見捨てて置けるなんて、バランスなんかもう兄弟じゃない!

ここまで狂信者が出ているのは相当に気持ち悪い。

後の結末から考えればわかるけど「あってみてよかった人」ってのは全く意味がない。外側から見て、この人物が何をもたらしていたかはサデュースのほうが遥かに明快で、そして真実に近い。


もともとここに要るあやかし屋の何人かだって、その件で皇帝に事件の追求に来た連中。なのにいつのまにやらペトラスのファンクラブ会員になって、今や彼のために長生きの研究をしてるってわけ。そんで、長生き研究会に所属しないあやかし屋はね、いつもみんないつの間にかいなくなっちゃうんです。

理性的な人はどんどん消えて、皇帝に盲目的な追従者しか残っていない。二月前にここに来たときは兵士や従者、皇帝の親族だってこの城にはいっぱいいたんです、なのに……今日城内で長生き研究会以外のメンバーに会いましたか?

もともとソンソンは庶民派の善良な霊能者だったのに、皇帝のおかかえになってるなんて絶対変。他の人達だってみんな評判の良い実直な人たちばっかりだったはずなのに。どうして皇帝に喜々として追従しているの!?いくらカリスマ性があるったって。

どうしてこんなことが!!旧知の友人をとまどいもせず手にかけたり、人の死体をクスリの材料に使って……!ペトラス皇帝だって、あんなにいいじいちゃんなのに

そして「善良な老人」の実態が現れる

城の奥に連れ、ペトラス皇帝とその周りの人間が
やらかしてきたことがどんどんあらわになっていった。

みんなもう脳みそぶち壊されてんだよ。
伝染病の家畜とか袋の中のかびたミカン。
あいつらに罪があるわけじゃない。でももうwかるよ。
どんなにしんどくってもそのままにはしておけない

オルグのつぶやき

この世に人間しか、私が食べられるものは無いんです。
だけどあの子に会って以来ね、人間を食べるのがすっかり嫌になっちゃってね。私もう二度と人間を殺すのはやめよう。このままいっそ餓死しようってそう思ったんです。

幸せな日々でした。お腹は空っぽでもあのコと一緒なら心は満腹。だけどそれは、私の勝手な幸せだったんです。そろそろ飢えて命もかれようとしたある日、あの子が山のように人間を殺して、私に食べさせてくれたんです。

そして、笑ってこういいました。「これで人ではなくなったね。ついに俺は人でなくなったね」

クリップ、クリップ。大好きなクリップ。なんてことを私はクリップにさせてしまったのだろう。だけど何もかも、もう元には戻らない……

「人殺しの病」

真面目で私利私欲の薄い薄い、誠実な人間でアレばあるほど、あいつらの媒体になりやすいんだよね。

人食いに操られていてもその人間の人間らしい部分は壊れること無くまるごと残るんだ。人を殺すことにまるで抵抗がなくなっていると言うだけで、涙も笑顔も本物だ。善良で優しい同胞たちを、アンタ達は殺せる?

ぼやぼやしてるとどんどん移るよ他の人に。これ以上ペトラスの親衛隊みたいなのに増加されちゃ、面倒だろ?

「善良や誠実がどうしても当てはまらない人間。他にもアルでしょう。媒体になりやすい人間の条件って」
「心に……傷とか深い孤独を抱えた人間かな」

グズグズしてたらあいつら伝染るぜ。
ちょっとでもペトラスに共感を感じた時にそこに取り付くんだよ

チキタ★GUGUその3 ニッケルの死&年代ジャンプ

ニッケルの最期

この混乱に背中を向けて生き延びる道が無いわけじゃない。
お前たちを忘れて、もう一度一人から始める勇気だって無いわけじゃない。
だけどチキタ。俺はモウそんなことしたくないんだ。

今となっては、気持ちは、たったこれだけ
「生んでやりたかった……こいつを」

教えてくれチキタ
どうしたらいい?俺もう一回ニッケルに会いたいんだ
会いたいんだよう……

俺がこれから行くところは、そりゃあ素晴らしいところなんだ。だからチキタはいつかラーラムデラルを連れてきてやってくれ。俺のところへラーラムデラルを。チキタならきっとできる。俺、待ってるから。

クリップやラーラムデラルのもう一つのIF的存在「ギスチョ」

うまいもんなんか食いたいとは思わねえ。
だって、今まで食ったもんで一番うまかったのは
お母ちゃんと二人で食った白いまんじゅうだったんだもの。
そして、それは毒だったんだもの

あいつ、人間だった。
子供のようだったよ。森のなかで母親を呼んでた。


なぜグーグーは「人食い」という性質を付与するのだろうか。と思ったら、別に人を必ずしも食う必要はない。生来の性質を引き継いであやかしにすると、人を殺すやつが多いってだけなのか?

チキタ★GUGUその2

バケモノ呼ばわりされて、嫌われていた頃は
年中腹ペコだった。
でも、チキタと百年始めてから、どうしてだろう。ちっとも腹が減らない。だからニッケル、ありがたいけど、当分は満腹だよ…





お前の親どもはとくにバカだった。
たった一人のお前のために命を投げ出したんだ。大喜びで。

ああ……なんて人間って、バカなんだろう

どいつを見ても、なんだか……お前に似ててねぇ。殺す気になれなくって……

二人の中には、見つけたんだね。チキタ。お前はクリップにこの間こんなものを食べろって言ったけど。こんなもんでも生きてるんだよ。だけど、この子の絶叫が聞こえた?

ラーラムデラルにもね、まだ聞こえないんだ。聞こえないだけなんだよ。

みーんな、毎日いろんな命を殺して殺して生きていく。いつかラーラムでラルがお前の声を完全に聞き取れるようになったら。ラーラムデラルの中に、私達を、見つけてくれるね。ハイカって娘の中に私達を見つけてくれたように。クリップの中にも、そしてオルグの中にも、いつか私達を見つけてくれるね。

いつもいるよ。お前のそばに…

最初から怖くない。こいつはあかんぼうみたいなもんだから

どうすんだよ!?さみしいなんて、まるで人間みたいになっちまって。人食いのくせに!

最初の夜、野郎の一人が俺をおさえつけながらこういった。「これは復讐だ。お前の母親は俺の兄弟の敵だから」。そいつの小さい弟は、俺の母親に殺されていたんだ。だから、俺も仕方ないと思った。おれがこうして痛い目見るのも仕方ないって。=復讐するのは当たり前だって

なのに、その妖は、人間の敵なのに。俺の母親の仇なのに、いったいどうして、いつの間におれ、そんなことどうでも良くなっちまったんだろう……わかんないよ

くちをきいたことのないもの同士が言葉をかわし、殺してあるとか言ってた者同士が暖めあっている。

ニッケルとキサス

あいつ、一週間も立たないうちに、今度はニッケルのところへ通ってたやつらに手を引けっていい出して、全員と渡り合ったんだぜ。ご自慢の顔に火傷までおってさ。

ところがやっと自分ひとりのものになったと思ったとたん、ニッケルのやつがチキタのところへ転がり込んでよろしくしてやがる。それでキサスはチキタを殺したいのさ。

恋ってのはバカなもんだなぁ

もともとキサスくんはニッケルにあこがれてた。弟の仇の「息子」だったから恨みもあったけど、本人の罪ではないし、ニッケルのことは尊敬してた。
だけど、女だってことがわかって、しかも保護者が死んで、ニッケル自体も弱ってて……いろんな条件が揃ったときにタガが外れた。

それで襲ってしまった。その後ニッケルのことが好きだと自覚して、周りの連中からニッケルを守ろうとしたけど、そりゃもう手遅れだよね。

まったく、どいつもこいつも醜悪だ。自分勝手にやりたいほうだいやらかして、後からこんなはずではなかったと泣きやがる。卑怯だと思わないのか

このセリフは自分に向けて言った言葉だよね。そして、その後無理やり襲ったニッケルは妊娠し、流産したことを知ると。

知らなかったよ。取り返しの付かないことって、アルんだな……

もう二度とお前の前には姿を表さないから元気で

ニッケル

自分の命が大切でない人間なんて、他人の命を疎かにする人間よりもずっとずっと始末が悪い。やっぱり初めてあった時感じたとおりだな。お前はラーラムデラルよりもずっと危険だ。

「死んでもいい」って思ってんだろ?最愛の弟や母親が死んで、お前自分ももう「いつ死んでもいい」って思ってんだろ?

ニッケルかわいいなぁ……。だからこそツライ。

「チキタ★GUGU1」

「小林さん家のメイドラゴン」が好きな人にこの作品おすすめする、というのはダメだろうか……。



あいつらはずーっと迷っているんだよ。ずーっとわからないんだ。一体自分が人間を憎いのか恋しいのか

人間はおかしな生物でね。
時々人間以外の生物とも家族とか友人とかになれるんだよ

「どうしたらいい?人間と家族や友人になるには」
「話しかける。時々触る。これがポイントです
 これを繰り返してゆけば、そのうち人間は勝手に
 あなたの家族や友人になってゆくでしょう」

てめーら。たった百年生きるのも難儀な弱虫のくせに
アホなことにうつつ抜かしてんじゃねえ。
せっせと生きろい!!

テレてるのか?自分のエサ相手に。赤くなったりして、まるで人間だな

ヒナが何羽いた?3羽か。じゃあジャストじゃん。人間の命もあの赤ん坊のでちょうど3つ目。これであいこだ。

君はあの鳥が一体いつ命を失ったかわかるかい?きみが鳥の傷に気づき、その血に痛ましい、と心を寄せた時。鳥はもう死んでもいいと思ったんだよ。君の気持ちに気づいて、あの鳥は死んでいったんだ。どんな怪物でもね、「わかってもらえる」ってことにはすごく弱い

百年ってね……そういう時間なんだよ

私は知らなかった。自分の幸せが、他の人間にとってどんなにおぞましいものかということを。私たちはまるで全ての人間の敵のようだった。近隣の村人も、戦闘中の両国の兵士たちも、誰ひとりとして私達を許さなかった。

「許しておくれ。全部私達が悪かったんだね。人の道を大きく踏み外してしまったんだもの。でも、そうしなければ生きていけなかったんだよ」

私は、母の体を口にすることはできなかった。それは愛情や罪の意識なんかとは関係なく、もうすでにその時知っていたからだ。自分が何かを食べたり飲んだりすることだけで命を繋いでいるわけではないということを。

どんなに食べるものがあったってね。あの時お前に会えなきゃ、おれはあのまま死んでたんだよ。だって、ひとりぼっちだったんだから。誰だって、他の誰か無しで生きていくことはできないだろう。言葉とかぬくもりとか、何かを分け合う誰かが……

多分、そうせずにはおれないんだよ。俺はこれからも狼から人を守ろうとするし、ちょっとでも言葉をかわした人間があんなになればまた泣くし。

だけどそれは狼やお前らのような人食いが全滅しちゃえばいいなんてこととは違うんだ。だって俺は狼も、それからお前のことも好きなんだよ。

「俺と一緒にいたからあのおじいさんとおばあさん死んじゃったのか」
「それはお前のせいじゃないんだよ、シャルボンヌ!」
「そんで…これからも、ずっとこうなんだ……」
「シャルモンヌ」
「そんなら、もう、いいや。もう……いいや」

人を食べると、体が温まって幸せな気持ちになる。でも最近はあんまり人を食べてないな。そっか、腹が減らないんだ、最近

そうだ、チキタと一緒にいると、なんだかいつも体があったかいんだ。そんで最近全然腹が減らないんだなー、俺。

もうお前のことはよく知ってる。家族みたいに。
どうしたらいいんだろう。無邪気で残酷なお前を知れば知るほどどうしたって、もう憎めない。やっぱり俺はこいつを憎めない。

ジャンヌ・ダルクについて⑥ 「傭兵ピエール」

これはまぁ異端の物語なので、他の作品を一度見た上で純粋なフィクションとして楽しみたいやつ。

ジャンヌ・ダルクに恋人兼参謀がいて、いろいろすったもんだしたあと途中でジャンヌを捨てて去るものの、最後にジャンヌが火刑にされるところに戻ってきて……という荒唐無稽なお話です。すごいシンプルなお話ではあるんですが、やはり最後の展開は今読んでもぐっときますよね。

この作品いろいろ見所あります。
オルレアン包囲戦の詳細な描写もそうですし、「みんな戦に疲れてた」というイメージが強い百年戦争の物語においてやたらと豪快に、しかも楽しげというか活き活きしてる主人公たち傭兵の描写それ自体がまず他にないわけですが、やはり、神聖化されがちなジャンヌダルクをもっとも人間味たっぷりに描いているのが特徴ですよね。 ピエールがジャンヌを抱かなかった理由って今でもわかるよーなわからんよーな。

ジャンヌ・ダルクについて⑤ 安彦良和「ジャンヌ」(後編) ルイ王太子との対決

なぜそうなのかっていうことはきかないで。
わたしにもそれはわからないの。
でも、神様がそう望まれているのよ。
この戦争はもうおわりにしなければならないって。
でも、人間たちの勝手な欲や、恨みや、意地にまかせていたのでは決着がつかない。
だからわたしに仕事をお命じになったの。

ロッシュの戦い

①シャルル7世の愛人アニエス・ソレルがいるためこちらに移動。
 先に王太子軍がロッシュを確保する。


王太子派ブルボン公の騎馬部隊5000 VS リッシュモンの部隊槍兵8000。
 本来は王太子軍の方が総勢で優勢であったのに、王太子が独断でロッシュに赴いたため大敗。
 ルイ王太子はオーベルニュへ敗走。

③リッシュモンから、ジャンヌと相対した時の話を聞く。


アランソン公がブルターニュ領バルトネーに侵攻

①サン・マクサンでの戦い
 エミールは使者としてアランソン公のもとを訪れ、アランソン公からジャンヌの話を聞く。
 アランソン公はジャンヌの件でシャルル7世に失望していた。

②アランソン公に捕らえられ、オーベルニュへ連行される。


③アランソン公は戦闘に破れ降伏。
 この間、ブルボン公、オルレアン公、ラ・トレモイユ、ブルゴーニュ公は全く動かず。


ジャンヌの異端審問の再現

「どちらかを選べ。男の服と女の服だ。素直に女に戻って女の服を着るなら情けをかけてやろう。だがこのうえまだ男のふりをしたいというのなら、それはどこまでも神の定めた掟に背き、この俺にも逆らうということだ。その時は…」

「あなたも、よもやジャンヌが女の服を着ることを拒み、そのために火あぶりにされたのを知らないはずはないでしょうに!」

「無論、知っているさ!だからお前にもそれをしてみろと言っているんだ!ジャンヌを気取るお前なら、服と一緒に生き死にを選ぶこともマネられるだろうよ!俺はジャンヌが好きだ!おれは多分ジャンヌとうまくやれただろう!ただし、戦が上手でイギリスを憎んでいるジャンヌとならばだ!神がかりで説教じみたジャンヌなら用はない。それよりも十万の軍隊とハガネの武器をおれは味方にして、神の祝福する勝利をもぎ取ってやる!
 ジャンヌは死んだ、灰になった……それで何が変わった!?イギリスは出ていったか!?神が正義を実現してくれるなら、聖書の民はもっと幸せだったろう!同じことだ!力以外の何に跪けと言うんだ!」

ジャンヌの出現に、みんな希望を見た。しかし、彼女に見た夢が果たされなかった時、ジャンヌなど最初から信じていなかったラ・トレモイユや、ジャンヌを評価しつつも依存しなかったリッシュモン以外は希望を持ってしまったがゆえにそれ以上の絶望を感じてしまった。バブル発生からの崩壊だわね。

ジャンヌを見殺しにしたこと、というかジャンヌがグランス全体の勝利をもたらさず途中でリタイアしたことの恐ろしさは、神というものを信じていたこの時代の人達に耐え難いものだったであろう。だから、ジャンヌロスに陥ったり、必死にジャンヌの信じた神を否定する。あるいは、シャルル7世の無能さを強く責める。そうすることによって、ジャンヌそのものを神聖化していった。


ジャンヌ以外の少女は、はたしてジャンヌと同じ苦しみに耐えられるか

①ジャンヌの最後の告解を聞いたマルタン・ラブニュ修道士と面会する

神は、信仰の深さ浅さで人を選んだりはいたしません。神の御心を推し量ることは出来ません。ただ祈り、願うのです

そして信じたいのです。愚かしく罪深い人間の性よりも、神の御意思がお強いということを。人の理性が、悪い欲望に屈することがいかに多くとも。いつかはその理性の正しさの支えとなる我々の力を超えた力が、聖なる御意思としてこの世に示されることを私は信じたいのです。
イエス・キリストとジャンヌに祈ります。あなたが救われますようにと!

ジルドレは、人の弱さに直面し、さらにジャンヌの死に直面したことで神の救いを信じることもできなくなって崩壊した。しかし、本当に神を信じるなら、ジャンヌが死んでも尚、信じ続けなければならないのかもしんないね。そんなの人にできることかどうかわからないけど



1453年百年戦争終結後の1455年にジャンヌ復権裁判

途中王太子ルイ(後のルイ11世。1423-83)との不和や、愛妾アニェス=ソレル(1422-1450。女性として初めてダイヤモンドを身につけたとして有名)の政界介入などもあって苦しんだが、シャルル7世は、長く心残りであったジャンヌ=ダルクの復権において、1455年、勅命によってジャンヌ復権裁判を開かせることにした。

これにより、翌1456年ルーアンで、ローマ教皇カリクストゥス3世(位1455-58)は、1431年のジャンヌ宗教裁判の無効を宣言、無罪と復権の判決が出、ジャンヌは名誉を回復した(時が経ち1920年にはローマ教会で、ジャンヌを聖女に列し、フランス国民の英雄として讃えられたのであった)。

1920年 第一次世界大戦期に愛国の象徴として「聖人」として都合よく担ぎ上げられる



ジャンヌ

安彦 良和,大谷 暢順 日本放送出版協会 2002-03
売り上げランキング : 112417
by ヨメレバ


というわけで、ようやくこの漫画を読み切ることが出来ました。このマンガをパット読んでもろくに理解することが出来ず、その背景から理解したいと思って百年戦争関連のWikipediaやら新書やら他のマンガを読んで、ようやくおぼろげーに見えてきました。

この時代は本当に激しい時代だったのだなと思います。

ジャンヌ・ダルクについて④ 安彦良和「ジャンヌ」(前編)ジャンヌの死後からスタート 

「教えてジャンヌ!わたしにわかるようにはっきり答えて!なぜあの人達はわたしあなたの味方ではないの!?なぜあなたがいのちをかけて守ったシャルル国王様がひとりぼっちなの?そして、なぜあなたを見殺しにした王陛下を助けろというの?」
「言ったでしょう、なにがあっても……って。なぜかわからなくても、正しいことは信じ続けなければならないの」
「そんなのはダメ!そんなことなら……わたしは耐え続けていくことは出来ない!拷問されるかもしれない。殺されるかもしれない!それも耐えろというの!?なんだかわからないことのために!?そんなことできない!!」
「わたしは耐えたのよ。エミール。耐え続けてただお告げに従って……」
「そして、あなたは火あぶりになったのでしょう?私には無理!できない!!わたしはただの女です!あなたとは違うんです!ジャンヌ!お願いだからこれからは私を好きにさせて!わたしは自分で考えたいの!けっして悪いようにはしないから!」
「だめよ、エミール!なにもわかっていないのね!自分の力で一体何が見えるの!?人の力が何?自由が何?そうやって鎖で縛られてみてもまだわからないの?あなた以上のものに、あなたは従いなさい!!

この作品ではジャンヌは物語開始時点ですでに火刑で処刑されている。つまり生きているジャンヌは登場しません。かわりに主人公はロレーヌ公の妾(アリゾン・デュメ)の娘エミリー。ロレーヌ公が死んだ後は、素性を隠してボードクリール卿の養子になり女ではなく男「エミール」として育てられた。ジャンヌと似た運命を選んだ少女が、ジャンヌの足跡を辿っていく、という話。似た存在からジャンヌを語らせることにより、「ジャンヌ」というのがいかに特異点的存在であるかが浮かんでくるという構成ですね。

時代背景 「1440年のプラグリーの乱」発生時点からスタート。

1431年 ジャンヌ ルーアンにて処刑される
1431年 ブルゴーニュ公とフランス王家との間に休戦協定
1435年 アラスの和議が成立し、フランス王家(アルマニャック派)とブルゴーニュ公との間に同盟関係。
1439年 オルレアン三部会。フランス王国は軍の編成と課税の決定を行うが貴族が猛反発。
1440年 反発する貴族によるプラグリーの乱
1445年 常設軍「勅令隊」が設立
1449年~ フランスが一気に攻勢をかけてルーアン→フォルミニー→ボルドー→カスティヨンの戦いで勝利
1453年 百年戦争終結


アラスの和議までは

・シャルル7世(アルマニャック派)&ブルターニュ公ジャン5世&リッシュモン
・ブルゴーニュ公フィリップ

という感じだったのですが、その後は

・シャルル7世 VS 反シャルル派(アランソン公ジャンなどが王太子を擁立)
で争いになりました。

ジャン2世 (アランソン公) - Wikipedia

百年戦争後半にフランスがイギリスに勝てるようになってきたのはフランスの古い封建領主たちの騎兵中心の戦術から国王直轄軍&大砲による中央突破戦術へのシフトしたことが理由であり、この関係で、中央集権が進みつつあったのですね。こうなった時に、軍のトップであるリッシュモンに権力が集中しつつあったため、反動でこういう内乱状態になりました。 ぶっちゃけ、この漫画、このあたりの説明がほとんどないため、知識がないと出だしで躓きそう……。 


ジャンヌの生家 ドンレミ村訪問

この村で、エミリーはジャンヌの亡霊を見る。

①ジャンヌは村ではジャネットと呼ばれ、機織り作業をしていた。
②妖精の木の下で天使さまと出会った話を聞く。
③ジャンヌから、シャルル7世をなんとしても守れと告げられる。


オルレアン城訪問

①「ジャック・ブーシェの家」を訪れる。
②反シャルル7世陣営の面々と遭遇する。

王太子ルイ
・ラ・トレモイユ
・アランソン公ジャン2世
・ブルボン公
・ラ・イール
・ポトン・ド・サントラーユ
・オルレアン公シャルル・ドルレアン

③囚われの身にあうが、辛くも脱出する。

私はあの時…思わずジャンヌにすがったんだもの。神様に、ではなくジャンヌに。
いけないことだけど、神様。
わたしの信仰の心はまだそのくらいのか弱いものなんです。

ロレーヌ川を下ってオルレアン公領→ブロワ伯領→トゥーレーヌ伯領→アンジュー公領へと移動

f:id:possesioncdp:20170218235032j:plain

ジャンヌがシャルルと面会したのは、アンジュー公領のシノン

①アンジュー公「ルネ・ダンジュー」がジャンヌ・ダルクの仕掛け人であったことがわかる。
 (ロレーヌ公はアンジュー公の義父であり、ボードクリール卿はロレーヌ公の配下)

王太子ルイがトゥーレーヌ伯領に侵入。

③トゥーレーヌ伯領内にてシャルル7世と面会。

④シャルル7世とともに、アンジュー公領のアンジェに移動。リッシュモン大元帥と面会。
 (シャルル7世がリッシュモンを恐れ、煙たがっている様子が描かれる)


ジル・ド・レの館を訪問する

要するに金が無いのだ。それに尽きる。兵を増やすには多額の給料が要る。ラ・トレムイユが散々浪費したために、国の金庫は空同然になっておる。

①資金の融通を依頼するために、大富豪である「ジル・ド・レ」の元を訪れる。
 
②ジルから、戦場でのジャンヌの話を聞く。


ちなみにジルは、この直後に別件で逮捕されます。

1440年5月15日、所領を巡る争いからサン=テティエンヌ=ド=メール=モルトの聖職者を拉致・監禁したことから、告発され捕らえられる。この領地は1438年にジルがジャン5世に売っていたが、ブルターニュから派遣された家臣が厳しく税を取り立てたことに憤慨したジルが暴挙に出たのだが、これはまさにジャン5世の思う壺に嵌った。直ちに家臣のナント司教ジャン・ド・マレストロワがジルの身辺調査に乗り出し、7月29日に告発状が公布され、9月15日に逮捕されたジルはナント宗教裁判所へ出頭した。

ジャンヌがシャルル王太子と面会したシノン城へ

①シャルル7世軍とルイ王太子軍がいよいよ対決。緒戦はトゥール近郊の戦い。

②ロッシュへ移動






おまけ 百年戦争というあまりにはた迷惑なお家争いについて

なぜフランスは一つになって、イギリスに勝たねばならん?なぜブルゴーニュやアルマニャックやブルターニュが別々の国であってはいかん?ウィリアム征服王以来、王家の血脈が通じ合うイギリスとフランスが一緒になってはなぜいかん?そのどちらを取っていても、戦は多分とうに終わっていた。違うか?お前のような理屈では答えられまい。だが、俺に言わせれば簡単だ。強いものが、勝つんだ。神は裁かない。ただ勝者を祝福する。勝者が神をたたえ、勝ち取った富で点にも届く聖堂を建て、領地を与え、聖職者たちに金ピカの衣を着せれば、紙は全てをよしとする。