なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

「疾風の勇人」1巻 今の高校生には、歴史の教科書読ませるよりまずこの漫画読ませたほうが絶対に有益

所得倍増計画」で有名な池田勇人が主人公です。
話は1947年、大蔵省次官になったところからスタートします。


「税の徴収のエキスパート」であった大蔵官僚時代

マンガではすごく若い容姿で描かれていますが、当然ながら大蔵省次官に若くしてなれるわけはありません。スタートの時点で池田勇人は48歳です。ちょうど池田勇人が大蔵省でのキャリアを終え、政治家を志すところですね。この大蔵省時代の経歴も理解しておくとより面白く読めるかなと思います。

1899年 広島県豊田郡吉名村(現・竹原市)生まれ。
1925年 京都帝国大学法学部卒業後、同郷の政友会代議士・望月圭介の推薦を受け大蔵省へ入省
1927年 函館税務署長に任命される
1929年 宇都宮税務署長を務めるが、落葉状天疱瘡を発症、大蔵省を休職後退職
1934年 病気が完治した後大蔵省復職 
玉造税務署長、熊本税務監督局直税部長、東京税務監督局直税部長を歴任
省内では、賀屋興宣と石渡荘太郎の二大派閥が対立していたが、池田は同郷の賀屋派に属する。
1941年 蔵相となった賀屋の下で主税局国税課長となる
国税課長時代は国運を賭けた太平洋戦争と重なり、賀屋とともに、日本の歴史上最大増税を行い軍事費の膨張を企てた
1944年 蔵相が石渡に交代して主流から外され、東京財務局長に。
1945年 主税局長。初の京大出身の局長として新聞記事になったほどの異例の抜擢。戦後GHQ本部に出向き、戦後の税制改革の協議を担当。
1947年 第1次吉田内閣(大蔵大臣・石橋湛山)下で、主計局長だった野田卯一を飛び越えて大蔵次官に就任
1948年 48歳で大蔵省を退官し、政治家を志す

池田勇人は大蔵省内では厳しい税の徴収で知られ、また戦時中には、戦費のために様々な税を設定したりしていました。

戦時税制|税務大学校|国税庁

日本の租税 - Wikipedia

<戦時税制=通称馬場税制
1937年 有価証券移転税、外貨債特別税、揮発油税、セメント税、麦粉税、南洋群島臨時通行税導入:戦費調達
1937年 揮発油税導入
1940年 法人税法所得税法から独立。物品税(1989年廃止)、通行税、入場税(1948年に地方移譲、1954年から1989年までは国税として再度課税)導入:戦費調達
1940年 源泉徴収の拡大
1941年 写真撮影税、馬券税、美容整形税導入:戦費調達
1942年 広告税(1946年廃止)、馬券税(1948年廃止)
1946年 財産税:10万円以上の財産を所有する個人に一度限りの課税。戦時補償特別税:戦時補償請求権に100%課税。
1947年 贈与税、事業税、電気ガス税、軌道税、軌道税付加税の創設
1948年 固定資産税の創設
1949年 シャウプ勧告

シャウプ勧告~太平洋戦争前後の税制について。 - 大学受験の参考書と... - Yahoo!知恵袋

見ての通り、今の日本の税は、日露戦争日中戦争中に開始しているものが多く、そのしくみを考えていたのが池田勇人たち大蔵官僚いうことになりますね。その中枢部分にいたということで、この時点でかなりの重要人物です。

それでもこの時点では池田勇人はあくまで官僚です。

「日本の独立」を目指して、吉田茂のもとで政治の世界へ転身することに

GHQには)大規模な財政出動で経済を動かそうというニューディーラーが集まってる。計画経済ってやつだ。お前らのほうがよく知ってるだろうが。それには税金がいくら会っても足りない。連中は本国(アメリカ)ではできないいろいろな社会実験をしたくてウズウズしてるんだ。インフレで経済が吹っ飛ぶのが先か。復興するのが先か。俺達は彼らの実験のためのモルモットだな。」
「いつまで日本は占領国なんじゃろうのう」

日本はサンフランシスコ講和条約までは扱いが占領国であり、独立とはいえない状態であったと。そしてそうした国の現状を憂いていた池田勇人吉田茂前総理に声をかけられて彼の派閥に入る、という展開になっています。

貴様らも、あの連中にはさんざん煮え湯を飲まされて来たろう!
GHQが何の略か教えてやるっ!
Go Home Quickly!! とっとと帰れ、だ。バカヤロウ!!

ちなみにこの「Go Home Quickly」発言は大和田秀樹の創作ではなく実際に吉田茂が発言したものです。名言・失言で有名な吉田茂は見どころが多いですね。

連中をとっとと追い出しての。
この真っ白い、何も描いてないキャンバスに
わしらの「日本」を描くんじゃ

しかもこちらは史実がベースですから本当に熱いですね。


まずは選挙で社会党民主党国民協同党に勝つところからスタート

吉田茂の派閥に属した池田勇人だが、吉田茂率いる自由党は、戦争の敗北の影響で、選挙では惨敗していた。

日本社会党143
民主党124
国民協同党31
VS
自由党 168

これを巻き返せなければ、国家を率いて独立を目指す以前の話になってしまう。そこでどうやって吉田が仕掛けていったか。こういう政党間の戦争から彼らの戦いが始まっていく。
「炭鉱国有化法案」を利用した党派の切り崩しや「昭和電工疑獄」などの駆け引きを経て、まず吉田が政権をもぎとりにいきます。そして、いよいよ池田勇人の政治家としての初選挙が始まる……。

というわけで、初っ端から非常に面白い予感がします。



2巻を読むと、政治家というものにたいする対する認識がかなり変わります。