風雲児たち幕末編23巻 咸臨丸提督「木村義毅」
アメリカの為政者は、我が国と全く反対で、身分が上のものほど頭が良くなっていきます。
彼の国におきましては、身分の高き方々はみなそれ相応に頭の良い人達にございました。この点だけは我が国と全く違っておりました。(勝海舟)
「風雲児たち」は教科書に出てくるような人はもちろん、そうでない人たちにもスポットライトを当てることが特徴の作品。「江川龍興」などは教科書では全く見かけなかったのに風雲児のお陰で絶対に忘れられない存在になった。安政の大獄で処刑された人たちなども記憶に残った。
咸臨丸が主役のこの23巻ではなんといっても提督「木村義毅」と提督補佐「ブルック大尉」が印象に残る。次点で為替レート交渉に臨んだ「小栗忠順」と言ったところかな。
「中浜万次郎」は本当に優秀だったんだけれどこの航海でもあえて目立たず、立石斧次郎に立場を譲ったという描写でしたね。目立ってないけど「小野友五郎」の天則計算能力がブルックに認められたことや、フィラデルフィア造幣局で日本の鋳造技術の高さが評価された点などはやっぱりちょっと嬉しい。
ポーハタン号(正使)、咸臨丸(護衛)の2隻で渡米
ポーハタン号(ペリー艦隊の旗艦と同じ)と咸臨丸で渡米。
ポーハタン号はタットナル提督とピアソン艦長。
咸臨丸 は木村義毅 提督と 勝海舟艦長。
咸臨丸にはブルック艦長がヘルプで入っていたというかこの人いなかったら沈んでた。
木村義毅も勝海舟も、この航海を絶対に成功させるため、
すべての私財を売り払い、この航海ですべてを使い切った。
勝海舟は出港前々日から高熱にうなされており、そのまま出発
福沢諭吉などが、往路での勝海舟は情けなかったと語っているが
勝海舟はもしかしてインフルエンザだったのかもしれず……
あれ、これ咸臨丸の中で流行した病気は、もしかして勝海舟のせいだったのでは……
①嵐に見舞われ咸臨丸水夫は3名が死亡。
病状が回復しなかった9名の水夫はサンフランシスコに取り残されることになる。
(この9名は後にブルック大尉によってフェフート号で帰国)
②嵐で破損した咸臨丸の修繕費は25000ドルだったが、
これはアメリカが自国で負担するといって受け取らなかったため、
木村義毅は船員未亡人団体などに寄付することになった。
③咸臨丸は先に帰国し、正使は、さらに後に「ナイアガラ号」にのって帰国。
南北戦争のわずか10ヶ月前のブキャナン政権でなぜ日本の使節団はこれだけ歓迎されたのか
当時のアメリカやハワイでの歓迎ぶりというか狂乱ぶりはすごい。
「立石斧次郎」(トミー)の人気もビートルズ並www
南北戦争時代の分裂の悪いムードをお祭り騒ぎで盛り上げて大統領選挙を有利に運ぼうとしたブキャナン政権の思惑があったとかなかったとか。なるほどこの視点はなかった。
歴史って
フィラデルフィア造幣局を訪れて、日本金貨とドル金貨のドル含有量を調べる
これなにげに超重要事項。
通貨に含まれる金の含有量が恐ろしく正確であったことにアメリカ側は驚いたというが、
それはともかく、同じグラムに含まれる金の含有比率を正式に確認できた。
「小栗忠順」はこの結果を元に金銀交換レートの改定を申し出るが受け入れられず。
「現在世界の為替レートはメキシコドル銀貨を基準としている。これを変更はできないし、どの国もそれで健全に動いている。
要するにあなたがたが困っているのは、金と銀のレートが日本だけ世界とちがっているちおうことです。世界中で、日本の金だけが世界価格の3分の1で手に入る。そりゃ世界中の商人が日本に押し寄せてくるのは当たり前でしょう。人がいいにも程がある。
銀の価値は世界基準であるから変えられない。ならばあなたの国がやるべきことは一つしか無いはずです。金の値段を世界と同じ3倍にすればよい。それで万事解決です。世界中どこからも文句は出ませんよ。」
「むろんそれが最善の策であることは承知しています。しかし金本位制の我が国がそれに踏み切れば、日本国内の物価はすべて3倍に跳ね上がってしまう。超インフレが起こり、庶民の暮らしは破壊されて、我が国は滅びます!」
「その程度のインフレは世界のあちこちで常におこっています。お気の毒ですが、貴国が世界に乗り出すための試練の一つというほかはない」
つまり、当時、金が多く取れるせいで、
日本における金の価値は他国と比べてあまりに低すぎた。
その結果、他国との交易が開始した上、金本位制であった日本は
金の価格を上げることもできず(インフレになってしまう)、
しかし他国との為替レートを変えることもできずという縛り状態になってしまったと。