「ib インスタントバレット」5 やっと見つけた、私の敵!君の名は・・・
君と私が一緒にいた時間なんて、全部合計しても1日に満たないでしょ。
それで私の何がわかるの?
もし君が前世で私の恋人だったとか、運命を共にする仲間だったとか。
そういうのだったらいうことを聞いてあげたかもね。
だけどそうじゃなかったでしょ?そうはならなかったでしょ?
私は10歳の時に自分の欠陥に気づいた。
人が困ることをするのが好き。
取り返しがつかないことが好き。こわれゆくものを見るのが好き。
人から憎まれるときこそ、強く自己の存在を感じ取れた。
正義とは程遠い、吐き気を催す錯誤。いうなれば悪の資質。
自分を律してみることを変わるというなら確かに人はそのレベルなら変われる。
だけど、どうあがいても生まれ持った資質は変えられない。
嘘を重ねたって、恋をしたって、人は鳥にはなれないし、私は別の誰かにはなれない。
私は私だ。
人が苦しい顔をするとき、無視を踏みつぶして歩くとき、それに喜びを感じてしまうのが私の本質だ。
いつだったか、悪が見つからないって話をした。
考えてみれば当たり前だ。だって、私自身が悪なんだもの。
どんな悪人も、私には悪には見えない。
私のほうがもっとひどいことができるんだもの。
私のほうが間違っているんだもの。
結局自分以外の間違いを見つけられなかったってだけの話。
知らなかったんだよ。
私こそが倒されるべき存在。
私の本質こそが悪だって。
だからさ、適任なんだよ。
私が悪者、君がヒーローになればちょうどいいと思わない?
この数か月いろんなことがあった。
いろんな人と出会って、いろんな絶望と願いを見た。
僕の小さかった世界は、ほんの少しだけ広くなったよ。
世界は美しいのかもしれない。
少なくとも、報われてほしい人がいて、守りたい人ができた。
幸せの輪郭に触れた気がした。
だからこそ、抑えきれない。
何の苦労もなく当たり前のようにそれを持っている人々が
それを分け与えてくれなかった人々が
幸せを知れば知るほど、今まで僕からそれを奪ってきたこの世界が
そして、きっとこんなかすかな幸せすらいつか奪っていくであろうこの世界が
憎くて、憎くて、たまらない。
僕はここにいる。
僕は!お前より間違っている!
僕は、お前の敵だ!
私は悪として生まれてきました。
だれよりも向いていないのはわかっています。
その資質がないのはわかっています。
でも、それでも、悪でも、正義になれますか?
ああ、やっと見つけた。私の敵!!