なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

「繊細チンピラ」の取り扱いについて

正直に言います。記事面白かった。そのうえで今回ちょっと危ういなとも思う。


小野ほりでぃさんの話において、登場人物の例が極端なのはいつものこと。


どうしてこういう極端な例にしているかというと、「その場だけの笑い話であるにも関わらず、それを別の場で応用するバカ」がでてこないようにするためだろう。


今回の話の場合、前提として被害者は「何も悪いことしてないのに絡まれてしまう人間はネットにおける弱者」ということになっている。そして、絡んでくる相手はこれまたキチガイじみたキャラ付けが行われている。こういう極端な見立てにおいて、この極端な例についてのみ「繊細チンピラ」という言葉を当てはめていることが重要。


こういう極端な例以外について、考えなしに「繊細チンピラ」という言葉を使うのは非常に危険。いや、言わなくても9割の人はわかってるとは思うけども。


(ここから丁寧語)

今回の話、基本的にロジックとしてはダメダメなんですよ。
だって、藁人形論法だもん。藁人形論法を面白おかしくしてるだけだもん。
これ、ところかまわず使うともれなく反撃を受けるスキだらけロジックです。

作者の人はわかってて書いてるっぽいですが、
読者の人ホントにわかって楽しんでるのか心配。

なんで右の奴も怒ってるんだ


今回の「繊細チンピラ」の定義はこちらですね。

弱者の立場を利用して意見を通す人。自分の怠惰や、勇気のなさに対する怒りを他人にぶつけてしまうのが繊細チンピラなの。

そういう選択肢を取れない自分の怠惰や、勇気のなさに対する怒りを他人にぶつけてしまうのが繊細チンピラなの。怒っている人というのは基本的に、自分の状況を整理できていない人だと憶えておくといいわ。悲しすぎて受け止められない事実、自分の行動の自己矛盾、考えなければならない分からないややこしい事態に思考回路がショートすると人は怒るの。

*1


このロジック、すぐにブーメランになるのわかりますか? 

なぜかというと、今まで一方的に攻撃されていた「という認識だった人」が、「繊細チンピラ」というレッテルを手に入れてところかまわず攻撃しだすと、今までは弱者だったのが、今度は「弱者だった立場を利用して攻撃する人」になってしまうから。「今までこういうやつに迷惑被ってきたんだから、ちょっとくらい懲らしめてやっても良い」という考えを持った時、まさしくそれは「弱者の気持ちを思い知らせてやる」と暴れる「繊細チンピラ」に自分がなってしまっているわけですよ。「ミイラ取り」がなんとやらですね。無自覚な内に、自分が自分が繊細チンピラになってしまうんですよね。


つまりこれ、やってることは「やられたら倍返しだ!」にすぎない。「今までこういう奴に絡まれて迷惑してました。謝らせてやる!笑いものにしてやる!」になってる。やられたやつが、やり返して、相手をメタ合戦でより上の立場から笑いものにして、それで終わりになる、問題解決になるとでも本気で思ってるのだろうか?



これは、会社において「ゆとり」「老害」「真面目クズ」「ブラック企業」みたいな罵倒の応酬が形をかえて繰り返される構造に似てますね。問題があったときに二つの陣営にわかれて、お互いが「相手のせいにすればいい」「とりあえず自分が上位に立つ。話はそれからだ」という考えで不毛な争いを続けるアレ。何一つ問題解決について進歩がなく、ただただ相手を傷つけ合うだけの虚しい関係。



最後のコマを見る限り、作者はこのことに自覚的である様子。
ただ、ブコメみるに、わかってなさそうな人が多そうで、ちょっとこわいなぁ。

藁人形論法について

藁人形論法は、「自分とは遠く離れた悪者」のイメージを先にこさえて、
自分がこさえたイメージを自分で一生懸命分析し、
その分析結果を一般に敷衍しようとする行為です。*2
傍から観るととてもマヌケなのですが、
自分の内面に、この藁人形に近いものをもっている人たちは、
このロジックの革を被った、
ただのレッテル貼り行為にいとも簡単にあっさり釣られます。


これ、釣られる奴はバカとかそういう話じゃないです。
私もしょっちゅう釣られてます。
自分のなかに無数の藁人形が居ると思います。
問題なのは日ごろの人間関係とか好き嫌いなのです。


だから、今回「繊細チンピラ」って言葉を言わて、
「面白いカリカチュアライズだな」とか「藁人形乙」ではなく
「そうそうこんな奴居るよね」「俺の回りにいる奴にもこの言葉ぶつけよう」
とおもった人は、まずその人の前に自分を見なおしてみたほうが良いと思いますよ。
自分の中にいる藁人形に気づくことができると思います。




私の藁人形にひっかかったのはこちら

自分の苦しみの解決を自分でなく他人に任せようとすると「幸せな人は幸せそうにしているだけで不幸な私を傷つけるので一生黙っててください」というようなクレームをしらみ潰しに繰り返す

手前の段階で「あ、これ藁人形だ」と思ってなかったら多分普通に引っかかってた。

*1:「要は勇気が」じゃねーかぶっ殺すぞ

*2: の記事の7割くらいはこの論法