なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

市場クロガネは稼ぎたい10-  「貧困者」にとってBIは良いのか悪いのか

新しい立場と既存の立場について

推進する側は いろんな問題がこれで解決するという。「実際にはやってみなければわからない」「少なくとも今のままではダメだ」と主張する。

保守側は現状に対してそれを適用しようとするとこういう限界があるという。これはどう解決するのかと問いかける。

この場合はっきり言って、優先すべきは保守側の意見であろう。推進する側は、経験不足だ。やる前から全ての問題がカバーできるはずもない。 新しい運営体制にかかる費用など計算しきれるわけがない。色んな面で、現状について細かく理解できているわけではないのだから、現状を把握している側からそれを審査するのは当然である。

だが、実際の所、議論の段階で、新しい意見の側が優れていることはまず無い。なぜなら、現状のやり方だって、「やってみて」「足りなかったところはさらに追加の手当を行う」という形を積み重ねてきているからだ。仮にゼロの地点から比較すると、保守側は「ズル」をやっているに等しい。なので、多少の不足や問題はについては、新しい意見の側にハンデを与えるべきであろう。

理想は「そういったハンデなしでも、新規の案が現状よりはるかに良い」ことであるが、そんなことが可能なら、そもそも議論にはならない。現状と新しいアイデアはどちらにも良い点と悪い点がある。お互いが、その己の良い点を主張し、相手の悪い点を主張するような形で言い争いをしているだけだ。両方の良い所どりができないなら、後は「好み」の問題ということになるのではないか

個人的な考えとして

私自身はベーシックインカムで議論すべきは「税率」であると考える。財源になった瞬間相続税だの、そもそも日本は公務員の比率が少なく国である。それでいて、社会保障の費用が最も高い国なのだ。つまり、もともとコストは小さく、サービスは大きいのだ。

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5190.html

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言い換えるなら、ベーシックインカムにする恩恵が「一般庶民には」最も小さい国ということである。ベーシックインカム推進派の意見は、行政のムダを省くということだ。これを「コスト」側の問題だと認識している人はおめでたいと思う。私はむしろ「公的サービス」の削減だと思う。ベーシックインカム派の人に金持ちが多いことでわかると思うけれど彼らが本当に主張しているのは「全国民に生活の最低限の保障」を与える代わりに、「高度医療」や「特別補助」などをしないということだ。コンセプトからしても、それこそ長谷川豊の意見に近い。 高齢者になって蓄えがなかったり、重病になったりした人は自業自得、とみなしてその補助を大幅に減らす。そうすることによって、全体に薄く配っても税負担は減るし、種々の規制やら義務も緩和される。そもそも「ベーシックインカム」の主張は裏返しとして「不公平な税負担の排除」の主張にも説得力を持たせるであろう。「ベーシックインカム」を導入することのメリットとして、公的サービスがより充実する、などという話をしている人はあまり聞いたことが無いので、多分そういうことではないだろうか。

その上で、彼らは彼らで、優秀な人間は出る杭を引っこ抜く形で支援するような形を「自前で」用意するだろう。税負担が軽くなれば、そういう支援は自前でやると言ってる。 その逆に、彼らの視点から見て見込みがなく怠惰な人間は、生活保護以下の支給額で我慢しろ、という話になるだろう。ベーシックインカムは本当に「最低限」であって、私はそれ以上の何かを提供するものではないと考えているのだが、金持ちでもないのにBIを支持する人は、どういうところに魅力を感じているのか私には正直良くわからない。

社会的弱者ほどBIは厳しいような気はするな

んで、クロガネの世界におけるBIの話。焦点として、特に「貧困者」にとってBIは良いのか悪いのかという話になる。この作品の舞台は、現実と違い資産がマイナスになった人に対しては生活保護などはなく「退学」処分になる仕組みを導入している。だからこそ、失敗してすべてを失っても退場せずに済むBIは、生活保護という代替手段がない現実の日本よりは遥かに魅力がある。それでもなお、賛成しない人もいるのだ。(ちなみに作者さんこのあたり、作品世界と現実世界をちゃんと区別できているかちょっと怪しい)

ベーシックインカムによる最低限の補償ね。それってつまりそれ以上の公的補助は困難になるということだ。

初等部の教育は各個人に合わせた保障有りきだ。それがベーシック・インカムで全員一律になる。今までみたいなやり方はできなくなるだろう。特別な補償が必要になる立場の人間にはつらいわな。

そこでさらに特別な補償が必要になる立場の人間に追加で何かできるか?BIでいっぱいいっぱいのはずだよね?もしそこでさらに補償を、となれば結局税金をあげる必要があるよね。

そうなったらBIを指示していた人たちは黙ってないでしょう。みんな怒る。そのなった時、怒りの矛先が、補償の削減の対象がどこに向かうと思う?

「教育」じゃないか? 

現実として、今の仕組みでも教育への補償は足りないし、教員をどんどん減らそうとしてるよね?BIを提案するあなた達は、一体何を持って、私たちに安心しろと言えるのかな?

さっきも言ったけど、BIそのものに良いも悪いもなく、BIは「何%の税金を取って、何%を再配分するか」という話である。この際に「最低限の補償」の値をどう議論するのかが問題になる。

ここのコンセンサスが取れて、その結果として圧倒的に不利になる立場の人がいないならいいだろう。また十分なBIを実現するために税金が大幅に上がるというのでなければまぁわかる。だが、どうやってそれを実現する? 手続きは本当に簡略になるのか?

クロガネ11巻における決着はなんかはぐらかされたようなきがする

BIの話ではあまり決着がつかないのでキースと朝政のどちらのほうが魅力的か、という対決ではぐらかされたような気がする。先進医療に関しては、「この作品の世界では若者ばっかりだから関係ない」で終わり。それ本来のBIを考える上で3番めくらいに重要だと思うんだけど?

結局のところ、システムの話というより、どちらのシステムでもいいが、どういう理念が必要か、という話にズレていき、その際、キースの話とBIの話が相性があまり良くない形になってしまったように思う。

そして、そこから先も外部からの工作など「選挙」に関する話に移ってしまい、BIの話はメインではなくなったどころか、むしろBIというテーマがお荷物になってしまっている感じすらあった。





まぁ、結局のところ、BIの正しさを論じるみたいなところは無意味なのはわかってる。

なので、

◆リーダーが人の努力をどういう形で支援したいと思ってるかどうか

◆フォロワーである一般の人たちが、どちらを選択するか

という、就活のマッチングみたいな展開で進んでいる模様。



分かっちゃいるんだが……それなら、こんな中途半端な形でBIなんて話を持ち出さないでほしかったという気持ちは結構ある。