なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

「狼の口 ヴォルフスムント」 モルガルテンの戦いが壮絶

8巻で完結したので読んでみました。


この作品は、一時期残虐描写で話題になりましたが、大枠としては「スイス独立運動」(スイス森林同盟とハプスブルク家の戦い)を描いた作品であり、そのゴールは歴史的に有名な「モルガルテンの戦い」で締めくくられます。このモルガルテンにおける壮絶な戦いに至るまでの経緯を描くのがこの作品です。


狼の口 8巻 (ビームコミックス)

久慈 光久 KADOKAWA 2016-11-15
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by ヨメレバ

それは中世の西欧で、騎士たちが体験したことのない、新しい形の戦争だった。騎士=貴族が戦場を支配する時代の終わり、すなわち、武装した一般民衆が戦争の主役をつとめる時代の幕開けである

この戦いがあったのは1315年。

フランスとイギリスが百年戦争に突入したのは1339年で、こちらは末期まで騎士が活躍していたので、スイスの民衆の戦いは騎士たちにとって恐ろしいものであったでしょう。

このモルガルテンの戦いを単体で描くと、そのあまりの容赦の無さ、騎士道のルールを踏みにじる残虐さに民衆ひどい、ってなるところですが、この作品は歴史的経緯(ハプスブルク家のスイス弾圧の歴史)を説明する代わりに、「ザンクト・ゴッドハルト峠」に設置された「狼の口」という架空の関所における残虐行為を描くことで、ハプスブルク家がどれだけ森林同盟三州からヘイトを集めていたのかをこの上なく雄弁に伝えてくるのがすごいと思います。

実際はこのあたりの歴史は、神聖ローマ帝国内における王位継承権争いとも絡んでいて非常に面白いので確認してみると面白いでしょう


この時代の戦争の雰囲気を、特に説明無く絵で見せてくれるところがすごい

また、この作品中にはすでに鉄砲(ハンドゴン)の原型が登場していたり、ギリシアの火(焼夷弾)、フス戦争(1419年~1433年)の頃にはすでに鉄砲が戦場に登場するようになります。

特に説明はありませんが、攻城戦の描写とか、農民たちの武器とかまで細かいよなぁ……

日本が元寇(1274年~)の際に体験した「てつはう」はまだまだ実用的なものではなかったわけですから、やはりヨーロッパはかなり戦争に関して進化していたようにもいます。こいつらほんとこええな……