なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

地方活性化の主役としては「イケダハヤト」さんではなく「ヤンキーの虎」に注目すべき

という煽りタイトルを考えてみたけどいかがでしょうか。慣れてないので言い過ぎてるような気がしますが「ヤンキーの虎」は面白い本なのでオススメです。ネットには出てこないようなローテクな世界で地方を活性化させている存在についてのお話。

ヤンキーの虎―新・ジモト経済の支配者たち[Kindle版]

藤野 英人 東洋経済新報社 2016-04-15
売り上げランキング : 4103
by ヨメレバ

この本で紹介されているのは、みんな存在について認識はしていたけれど、いまいちどうとらえればよかったかわからなかった「地方で急成長している企業体」を運営している経営者たちの話。

こういう話をすると条件反射的に

ヤンキー文化圏に属する地方有力者なんて昔からいる当たり前の存在で、新しい話でもない

という反応をする人がいる。


そういう人は「マイルドヤンキー」って名前に対して「そんなの前からいただろ、自分が発見したかのように言うな」って反発する人と同じでポイントを理解していない。んで、はてブは基本的にこういう意見に星をつけるからこういう意見が正しいと思われがち。

そういう雑な話でいいなら、鎌倉時代の地方豪族からヨーマンユンカージェントリだって似たようなものだ。ポイントはそこではない。

書き手だってそんなことは百も承知である。
「マイルドヤンキー」を支えている、地方で増殖している「ヤンキーの虎」に注目を!(藤野 英人) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

大事なのはそこじゃなくて、この新興の経営者達は、「今」「どういうやりかたで」力をツケてきているのか、それは地方にどういう意味をもたらしているのか、という部分。「今までと似たようなやつらに見えるけどこういうところが特徴だよ」という話をしているのに「今までにも似たようなやつらいたぞ」という反応を返すの、ありていに言って文章真面目に読んでないだろ、と。この手の話ですぐに「ネーミング」とか「定義部分」にだけ反応してもしょうがないと思う。そういう「わかりやすい新しさ」みたいなものだけしか認めないから、イケハヤみたいな人が目立つんだってことを考え直したほうがいんじゃないでしょうか。






結論だけ言うと、すごくしょうもない話。

①年寄りたちがやってる人付き合い重視の(彼らからみたら)非効率な経営をやってる個人商店や小規模な会社を壊し、都市圏のサービスに置き換える
→「大企業のフランチャイジー」や「ニッチ分野に特化した専門サービス」

②一つの事業にこだわらず多数の事業をコングロマリット的に展開するのが特徴。一つ一つは成熟を通り越して衰退産業であるがそれを「束ねる」ことで企業として成長していく。

③「地方再生」には大きな需要があるが、それをビジネスとして大規模に取り組んでいるのは彼らである。彼らは行き場のない地方の若者に対して「居場所」を提供することに成功している(結構ブラック気味ダケドネー)


というお話。


よく「地方商店街がなぜ活性化しないのか」という話がありますよね。この時にやれ大企業のせいだなんだといわれますが、根本的には彼らに今のやり方を変えて新しいことに取り組む理由が無い、というのが大きいとされます。 シャッター街の寂れた風景や田舎の廃れた店舗を見ると貧しいとか苦しいというイメージを持ちがちだけれど実際は安定した固定客はいる。そもそも本人たちが生き残るだけの蓄えはすでにある。仲間内でお金を回し合っていればそれほど困らない。だから真面目に取り組む気がしない、と。それでいて、最低限の客は必要だから新しい勢力が出てくるのは困るんですね。だから外からの勢力には「地方を守れ」と言って反発する。地方の若い人が新しいことをやろうとしたり、効率の良いサービスをやろうとしても老人たちがよってたかって潰してしまう。地方と言っても駅前の立地は人が集まりやすい貴重な資源です。その場所をいつまでも生産性が低い老人たちがおさえてしまっている状態で、若者たちに地方で頑張れといっても無理ですよね。若者より老人のほうが多いところだと、若者はハンデを押し付けられて戦わされ、老人たちに気に入られるよう振る舞わねばならない。どうしても先行きが暗いと感じて都市に逃げたくなるものです。


これに対して、新興の経営者達は「地元の若者を優先的に採用する」(地方自治体や地方銀行から援助を受けるためというのもあるし、採用コストが安いというのもある)上に、そこで頑張れば他の地場企業より高い給与を支払う。地方を出られない若者にとってはチャンスを与える存在なんですね。そもそも、やってるビジネスが都市圏でやってるのをそのまんま持ってきてるものが多いので、都市の空気を感じられるし、ここでうまくやれば都市に出る手がかりを持てる。若者にとっては魅力的な職場というわけです。(ちなみに都市の人間からしたらブラック風味だと思います。それでも他の地場企業で働くよりは給料が高かったり希望を感じられるのでプラスに感じるんでしょうね)


地方で現実的に必要とされるのはイケハヤ的存在よりも、確実にリアルに居場所を作っていくビジネスをやっている人たち

ネットだとやれシェアハウスだ、ブログやらプログラマとしてネットで食っていこう自由なライフバンザイと息巻いている人が目立ちがちですが、実際の所イケハヤさんの弟子さん、ブログやらプログラマとしてネットだけで単体で食えてなさそうですよね。ミニマリスト界隈でも、結局一年近くたって元気に活動続けてる人達は結局会社員ですよね。
イケハヤ氏が企画に関わっている「絶対に死なないシェアハウス」について思ったこと - はらですぎ

まだ本当に若くてやり直しがきく大学生くらいなら「とりあえず話だけは立派な夢」のほうが良いかもしれませんし、自力で社会人として通用するスキルを身につけられる優秀な人はそもそもイケハヤなんていらないでしょう。イケハヤさん自身は否定しませんが、彼はちゃんとやり方ほとんどすべて公開してるのにそれに夢見る人はどんだけ自分をスゴイと思ってるんでしょう。

夢を見るなとは言わないけれど、現実と繋がったもの、自分でコストを支払るものにしないと理想を抱いて溺死することになると思います。

ところで「ヤンキーの虎」は投資信託の人が書いた投資家向けの本です


正直ここまで書いたこと、って最初は2行くらいで終わらせるつもりだったんですがなんか無駄に長くなりました。

私としてはこの本で紹介されている「伊藤レポート」の話と、「投資としてのポイント」の話をしたかったのですが……もうここまで書いてしまったのでこの記事はサブブログに放り込んで、改めてTwitterかどこか別のところで書きます。


「地方再生」という市場はかなり大きく、特に「ハウスドゥ」や「空き家再生プロジェクト」なんかは社会的意義が大きいと思います。 ゼロからイチを作り出そうという取り組みも大事ですが、今まであったものについて、誰も取り壊しのコストすら支払わず老朽化した建物が沢山残っていたり、この記事で述べたように非効率なビジネスのやり方がそのまま残っていて、ただでさえ人口がへっていってつらくなる日本の成長を妨げているという見方があります。

地方をそのまま放置して限界を迎えさせるのではなく、産業をちゃんと作り直す。既存の建物を使って、あるいは作り直してちゃんと使えるようにする。そういう基礎的なところをやっていくことは実は需要があるんだよ、ってことがデータつきでわかっただけでもこの本は結構価値があったなと自分では思ってます