市場クロガネは稼ぎたい13(完) ファンタジーで終わったけれど、ファンタジーで良かったと思う
ハガネ「何も……感じないのですか?
栄光も、挫折すらも……学園はあなたに何も与えられなかったのですか?」クロガネ「それでも俺はみたい!君が稼ぐ姿を!
自らの力で何かをつかむ瞬間を!」VS
シロガネ「君は何もしなくていい!僕が君を救うから」
なんというか、12巻の保健委員の話で半ばもう結論を出しておいて、もう一回同じことやるんか……。 丁寧といえばそうなんだけれど、ちょっと親切すぎるかなぁ。
浮動票について
トランプが勝利したので非常に説得力があるわけですが……。
1 政策そのものには関心が薄い
政策の中身なんかには興味がない。
そういう人間は、キャラクターやパフォーマンスでころっと傾く。2 低所得者層は、自分たちを向いていると「判断した」方に投票する。
インテリ嫌い、みたいな「イメージ」で判断する。
君たちにはわからないよね。
君たちも、朝政くんと同じ、持っている側の人間だ。だからわからない。
自分の状況を的確に分析し、迅速かつ的確に行動する。それができるなら、貧困に喘ぎ続けてなんかいないんだよ。でも、それは決して彼らが悪いわけじゃあない。運がなかった。それだけだ。そんなこともわからない朝政陣営たち、君たちには彼ら低所得者層の心はつかめない
「君たちは、稼げる」に説得力があるのがこの作品の世界
この作品は、途中からあくまで「学円園」という舞台に絞って描いている。
そして、この作品の中では全員がまだ若いし、機会もある。
それゆえに90限のクロガネの演説は一定の説得力を持つと思う。
みんな誰かに評価されると同時に誰かを評価してきただろう。
だが、評価する対象は他人とは限らない。「俺では稼げない。私には何もない。そう評価する者もいるだろう。他でもない自分自身を!
それこそが間違いだ。人はみんな輝く何かを持っている。俺は人を見出しそして活かすことで誰よりも稼いできた。
だからこそ、もう一度言おう。君たちは、稼げる。自らの意思で輝ける!
そのための環境は、ハガネがきっと整える。
君らが稼ぐ活路を我々がきっと見出す!」
そもそも、若者メインで負債のない国でもBIとかいい出すのが現実とこの舞台を混同してしまっていたと思うが、最後の最後で、きっちり、この作品はフィクションであると割り切った答えを出してくれた。
この作品を、現実と引き離すことで希望を描いたからこそ、現実の病んでる具合がよりいっそう浮き上がるように感じる。
現実には、ネットでやぎろぐみたいな人たちが支持されるほどにもはや衣食が足りてない。
彼らを少数派といって切り捨てることはもはや難しくなってきている。
そのくらい、この国は貧しくなってるんだな、というのは認識しておかないとダメだろう。
もはや、この作品のメッセージは現実の社会に訴えかける力は持たないだろう。
それでも、個人単位ではこの作品のメッセージを受け取ることはまだギリギリ可能だと思う。
そのスレスレのラインを目指しているのが、面白い。
では、現実の我々はどうするべきか
たとえ俺が彼らを見て、彼らのことをわかることが出来ても
彼らは俺をわからない。見ただけでは決して。
俺がスべきは、彼らをしることではない。彼らに知ってもらうことだ。
彼らに、俺の軌跡を、覚悟を、みてもらうこと
ぶっちゃけ、この点においてネットで稼いでるアピールしてる人たちってめっちゃ有利よな。
多分ネットしか見てない人たちは、現実において仕事してる人たちがどういう感じなのか全くわかってないかそもそも目に見える範囲、つまり飲食店とかそういう世界だけをみて「稼げない」「ブラック」「希望はない」みたいな認識になってるんじゃないだろうか。
何がムカつくって、こういうネットのアフィでもうけてるやつらが、よりにもよって、リクナビやDODAの広告で儲けてるってことだ。彼らも結局、そういう人たちの奴隷でしか無い。そこに地獄を感じる。
もっとさ、会社員が、自分たちの仕事のやりがいとかを、会社の統制抜きで発信できるようにならんとダメだと思うんだけどね……。
今のネットだけ見たら、そういう情報はないわけで、つまり、ネットって全然現実を見るツールとしては未完成もいいところかなと思う。まぁいいんだけど。でも、そうやってネットがふわふわした夢みたいな話と、現実の負の側面ばっかり垂れ流すような場所になってるなら残念だと思う。
今のネットは、特にはてブやスマートニュースなど、受動的に情報を見ようとする子どもたちには全くおすすめできないかなー。 能動的に見ていって発信するような人がもっと必要なんだろうね。もう悪質な人間が目立つようになってきたアフィリエイターじゃなくて今後はもうちょっとメディア、が必要なのかもしれない。
キースや帝シロガネが、成長する描写があればもっと良かったかもしれない
個人の努力なんて取るに足らないモノなんだ。
生まれや環境、それらに比べれば全然!
これは持てるものの、持たざるモノに対する怠慢だ。
僕は君たちを救わなければならない。しかしどうすれば良い?
彼女みたいな人たちは大勢いる。全員を助けられなければダメだ。
社会保障の充実か?
だめだ。エリートに貧困なんて実感できない。
貧困は、努力不足や自己責任って言葉で片付けられてしまう。
今の社会保障じゃ、本当に必要な人間にこそいきわたらない。無条件ですべての人に行き渡る社会保障。そのくらいでないと、彼女たちは救えない。
その条件を満たす政策はBIくらいしかない。
というわけで、なんというか幼い頃に道を定めたというのはいいんだけれど
シロガネにはそこで終わりにするんじゃなくて、そこからいろいろ成長してほしかった。
クロガネはそういう描写があったので、本来はシロガネだって
学園の中でいろんな成長があったほうが面白かったかもしれないね。
変に黒幕ぶらないで、ダブル主人公的な存在でも良かったと思う。
君たちは君たちのやり方を穿けばいい。
僕達も僕達のやり方で世界を変える
結局我々では彼女の居場所を学園内に作れなかった。
あいつは成し遂げたわけだ。少なくとも彼女に対しては。ならば俺も成し遂げよう。
彼らをも見出し、稼がせる。その誓いを
願わくば、このファンタジーで描かれた希望が、現実でも可能と思える社会でありますように。
私は社会を変えるみたいなだいそれたことは言えないけれど、
自分のできる範囲で、良いと思えることをやってちまちま世界の片隅で稼ぎながら生きていこうと思います。