なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

私はゼンショーの「パワーアップ工事」を結構本気で信じてました///

前の記事では話をわかりやすくするために、あえて単純化してまるでゼンショー虚業であるかのような書き方をしたけれど、実際はそれほど単純ではないです。
というか、高成長高収益企業だった時の全盛期のゼンショーを知らないで、今になってブラックの要素だけ取り上げて叩くのって「ブラック企業」について理解する上ですごくもったいないと思うので、もっとみなさんにもゼンショーについて知ってもらいたいです。


かつて(5年前)のゼンショーはちゃんと高収益企業だったし、その経営は絶賛されてた

その頃からブラックな運営は当然やってたんだろうけれど、それ以上に経営戦略が見事だというのがあった。5年前に株やってたら絶対買ってたと思う。(もちろん実際に買ってたら震災の時に死んでましたが)

ワタミが絶賛されてたころは全然知らないのだけれども、やっぱり高成長高収益だったんじゃないかなーと。その頃って、あんまり末端の労務がどうとか多分話題にならないんでしょうね…。


カルビーゼンショーセブン-イレブンなどの高収益企業の仕組みの根っこはどれも似ている気がする

ちょうど今日カルビーの経営再建の記事がホッテントリしてたけれど、当時のゼンショーはそれに近いことができてたような気がする。

カルビーはどうやって儲かる会社に変わったか カルビー松本晃会長兼CEOインタビュー(前編) | DHBR Featureインタビュー|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューはてなブックマーク - カルビーはどうやって儲かる会社に変わったか カルビー松本晃会長兼CEOインタビュー(前編) | DHBR Featureインタビュー|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

仕入れを買ってきたら、今度は工場でどんどんつくる。そうすると、フル生産になる。稼働率が上がる。そして、出来上がったものをどんどん売る。カルビーの商品は、売ろうと思ったら絶対に売れるんです。これが、この会社の一番の強みです。もちろん、売れる商品と売りにくい商品がありますが、そうなったら価格を下げればいい。簡単なことです。それこそ半値にしたら、必ず売れる。そうすると、棚からなくなるわけですね。なくなったら、次の商品を入れたらいい。何より罪なのは、売れないものをずっと置いておくことです。売れないことが罪なんじゃないんです。棚にずっと置いておくことが罪なんです。これだけです。簡単でしょう。カルビーの強みは何か、ということさえわかっていれば、難しいことなんてやる必要はない。実際、こうして固定費が下がっただけで、1.5%くらいだった営業利益率が、今は約10%になっている

数年前のゼンショーは、ほとんどこれと同じことをやって、営業利益率10%を達成していました。今じゃ信じられないレベルですが。ちなみに、セブン-イレブンの利益率はこのくらい。
https://www.7andi.com/ir/financial/highlight.html

つまり、どんどん作って、どんどん販売する(出店)する。作れば売れるんだから、どんどん作る。たくさん作ればそれだけ製造も流通も効率化できるし、製品価格も下げられる。そうやって顧客に還元していく。その流れはそう大きく変わっているわけじゃないんです。

コンビニだってそうやって発展していったし、カルビーもそう。ゼンショーだって同じ理屈でやってきたわけです。別にそれ自体は経営戦略として何も間違ってないと思う。

ただ、戦略の根本は同じなのだけれど、ゼンショーと、セブン-イレブンカルビーはそれぞれ業態が違います。そして具体的な戦術レベルだと全くやり方が違ってくるし、結果も変わってくる。 この記事はそういう風に読むと見方が変わってくると思うので面白いと思います。 カルビーの記事はまだ前編のみらしいので、後編で語られる詳細部分が今からすごく楽しみです。



すき家店舗のパワーアップ(オートメーション)マダー?

ゼンショーの場合、MMD(マス・マーチャンダイジング)という戦略とFA(ファクトリー・オートメーション)という戦略がキモになってるそうです。

前の記事でも紹介しましたが、この資料よく出来てるので、ゼンショーに興味ある人はぜひぜひ読んでみてください。
http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~nakajozm/htmlpage/pastworkPDF/2010zensho.pdf
*1


MMDについては
【ゼンショーホールディングス】 50%を切る“牛丼”依存 総合食企業への脱皮に向けた買収戦略の哲学|数字で会社を読む|ダイヤモンド・オンラインはてなブックマーク - 【ゼンショーホールディングス】 50%を切る“牛丼”依存 総合食企業への脱皮に向けた買収戦略の哲学|数字で会社を読む|ダイヤモンド・オンライン

の記事が詳しいので見ていただくとして、ゼンショーはファクトリー・オートメーション(自動化)にもかなり力を入れてるんですよね。工場や流通の合理化はなかなかスゴイものがあると思います。

一方、今までは、店舗についてはこれが弱かった。というか、「ヒト・オートメーション」と揶揄されるくらいに、ヒトを限界まで徹底的にこき使うことに特化していってました。ワンオペうんぬん言う前に、マクドナルド流のマニュアル主義を徹底し、またアルバイト(※請負契約)にすら売上責任を負わせ、徹底的にコスト管理を行っていた。そして、これはある程度のレベルまでは実際に非常にうまく行ってたんです。ただ、それをすき家は「やり過ぎた」。

私達が私達の職業と経験故に理解しているのは、必ずこの手のウマすぎる商売は「やりすぎる」ということ。完璧な儲け話というのは実在する。でも、最後にはそれが嘘でしたってなるのは、ただそれがいつまでも長続きしないってだけ。そのうち旨味がなくなってきて、そうするとひずみも出てくるからね。そして、事故が起こる可能性のある場所では、いつか必ず事故が起こるものなの。それがどんな事故かはわからなくてもね。もしもすべてが「想定の範囲内」で済むなら、弁護士なんて要らないの。(World End ECONOMICAⅢ)

だから、今回の「鍋の乱」を経て、今後の合理化施策として、また人手不足の対策として、「パワーアップ工事」は本当にやるかもしれないと思ってました。というか、やらないとダメだろう、って思ったのでちょっと信じちゃってました。実際「なか卯」って食券機も立派だし、店舗のオートメーション化がすき家よりは進んでるわけで、今回の大幅増資の資金を使って、少しでもああいう感じに店舗パワーアップできないのだろうかとか妄想してたんですよね。

…残念ながら、それができるんだったらとっくにやってますよね。ゼンショーは「合理的」なんだから。ゼンショーもそうするべきだとわかってても、できないんだろうな…。もうヒトを酷使すること前提でようやく成り立つ形に成っちゃってるのかな。なか卵の店がパワーアップしてるのは、あくまで客単価が高いからこそ出来るってことなんだろうか。


まとめ

ゼンショーは、他の企業より、売上原価が低いです。これは今でもそうです。 今ゼンショーの経営が苦しいのは、あくまであまりに急成長すぎて、有利子負債がばかみたいに膨らみすぎ、それが経営を圧迫しているからです。 

この状態で、SBのようなそれを覆すような「ボーダフォン買収!」やら「iphone販売代理権独占!」といった起死回生の一手が見えてこない。株価を大きく釣り上げる要素がないまま、景気トレンドが変わってしまいました。 このため、SBと違って波を乗りきれないのではないかというおそれがある状態になっています。

奇跡って、起きないから奇跡って言うんですよ

実は、自己資本比率や、ICRについてはここ数年意識的に改善していっているのですが、そういう普通の企業だったら評価されるべき取り組みも、この企業ではちっぽけなインパクトしかありません。結局、もう高成長を維持して株価があげられない限り、いつ突然死してもおかしくない状態にあるんですね。


次の記事で紹介しようと思いますが、今期のゼンショーの決算発表はかなり愉快なことに成ってます。おそろしく強気の予想ですが、これを途中で下方修正しようものなら、ほんとにゼンショーはやばいです。だから何が何でも人員を確保するでしょうし、しかもワンオペはやめないというむちゃくちゃなことに挑戦せざるを得ないのかな、と。

本当に、ゼンショーの現状の窮地を見れば見るほど、孫正義さんという人がいかに狂っているか、そしてそれ以上に天才であるかということを思い知らされるばかりです。

*1:このくらいじっくり企業分析をする力が自分にもあれば、がっつり投資とかやってみたいですが、こういう分析を日常茶飯時に行っているであろうアナリストさんたちと勝負して勝てる気がしないのでやめときますね