なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

ワタミの最低賃金関連議論のまとめ&「最低賃金影響率」という言葉

□発端(共産党委員が、ワタミをやり玉にあげて「体力のある企業」が最低賃金で雇用することを批判
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-05/2014030501_04_1.html

同日の予算委には、ワタミグループ創業者で自民党参院議員の渡辺美樹氏が出席していました。ワタミの低賃金の実態が取り上げられると、数人の自民党議員が渡辺氏を探し始めましたが、すでに退席していました。

渡邉美樹さんがFacebookで上記批判に対して反論
https://www.facebook.com/watanabemiki.official/posts/235306886593587?stream_ref=9

この反論内容があきらかにずれていたこと、国会での批判に対して、国会で答弁するのではなくFacebookで回答してすませてしまっているなど、相変わらずの自己完結的な対応に注目と批判が高まる。



ここからスタート。


以上の流れを受けて

topisyuさんの記事 「ワタミには体力ないよ?だからブラックになるんじゃない」

http://topisyu.hatenablog.com/entry/watami_vs_communist

ワタミには「十分な体力」がないという事実の確認(外食産業だけに限ってみれば営業利益率は1%以下、上半期はマイナス。回復の見込みもなし)

・「十分な体力があるから」最低賃金をやめろという論理は筋が悪い、と指摘 →この筋悪の論理だと「法律違反ではない」で返せてしまう。それでいいのか?

最低賃金にしなければ成り立たないような企業が市場で生存していること*1が最大の問題ではないかと指摘

過酷な労働環境と噂され、従業員が過去自殺しているにも関わらず、最賃で応募する人がいるわけですから、雇用を生み出しているという意味では価値があります。でも、もしかしたら、本当は市場から撤退していなければいけない会社なのかもと考えています。

ワタミ擁護の記事ではありません。 最大射程としてはワタミという企業の存在意義さらには、自民党の政策の実行そのものに疑義を問いかけるという意味でむしろかなり強いワタミ批判の記事ではないかと私は読みました。

つまり、「批判するならこんな筋の悪い論理を使うな。筋の悪い論理を使えば「法には反していない」というつまらない返しを許してしまう。さらに、ワタミを叩くことだけが目的ではなく、広く賃金を上げるよう訴えかけていくのであれば、今回のやり方は稚拙だ、ということではないかと。(ぶっちゃけると「もっと逃げ場がないくらいきっちり追い詰めろ」という感じではないでしょうか)

批判の仕方はあると思います。曖昧で恣意性があれば特定企業をイジメることだけで、問題を広範囲に検討できなくなってしまいます。それではもったいないです

はてブでは「法律違反でなければよいのか」「十分な体力がないからいいのか」という点が争点に

トピシュさんの記事は、ワタミへの批判ではあるけれども、それ以上に「共産党への批判のやり方への皮肉(および事実の確認)」が強調されており、かつワタミ批判において最も強調されるべき「最大の問題」が、本題部分の後の余談で語られているなど、まるで釣り記事のような構成だったため議論が微妙にこじれたようです。(トピシュさんのブログ記事ではいつもこういう構成になっているようです)




NOV1975氏による補足 「政策的な観点から、たとえ体力が厳しくても容認できない」

http://d.hatena.ne.jp/NOV1975/20140307/p1
必ずしもトピシュさんと意見が異なるものではないが、トピシュさんの記事では誤解されやすいところを端的に説明。

最低賃金をキープシなければやっていけない企業が上場企業でいいのかという問題の確認

共産党の批判は政策批判として妥当である(「筋が悪い批判」ではない)という指摘

ワタミの姿勢は現状自民党の政策に真っ向から反しておりこの点において批判及び説明を求めることが必要だという補足

金融緩和、インフレ誘導、消費税増税法人税減税という政策が「景気が回復する=賃金が上昇する」ことを大前提としているのに政策を推し進めている与党の人間が所有する会社ですらそうなっていないではないか、という政策批判

渡辺氏が国会議員としての職責を果たすにおいてはこの点は大きなツッコミどころであると思っています。もちろん、政府が言うところの「景気は回復してきている」ということは少なくともワタミにとっては事実ではなく(業績下方修正していますからね)、その結果として最低賃金で雇うことを継続しなければならないのであれば、それは政策に問題があるのではという疑念につながります。

yellowbell氏による補足 「最低賃金の考え方に問題がある」

http://h.hatena.ne.jp/yellowbell/316611632814462619

・十分に体力がなくとも、上場企業は中小企業とは違った責任があるため認めるべきではないという指摘

ワタミの言い分については、最低賃金自体の考え方がおかしいため、考え方を再確認すべきとう提案

・「最低賃金の影響率」を考えると、賃金が最低ラインに張り付いているのは異常であるという指摘(後述)

市場の与信に耐える企業体力と経営力、社会から資源を調達し富を還元する公器としての責任、そうしたハードルを充分越えたところにあるからこそ市場から資金を調達することが許されたはずの上場企業が、価値創造もままならない中小零細と同じレベルで労働市場のもっとも低廉な法定スレスレのところで資源を漁っている状況は、競争の健全さからも資源再生の永続性からも褒められたものではありません

低廉な労働力を最低賃金で雇う、これはいいのです。しかし、低廉な労働力では対応できない研修を必要とするような充分高度な労働を要求しながら最低賃金でしか雇わない、これは法定の範囲内だから問題がないとは言えません。(中略)最低賃金労働市場の正当な価格付けに影響するような不備を抱えているのであれば、法の不備として立法府が対応する必要がある

この言葉、覚えていってください→「最低賃金の影響率」

最低賃金の影響率とは、その審議会で新たに最低賃金を上げたときに、その新しく定めた最低賃金を割り込む労働者が何%いるかという数字です。(中略)パートアルバイトまで含める一般の最賃ではさすがに3割を超える影響率が出てくるものですが、それだけ、本来の最低賃金というのは低い水準なのです。

簡単にいえば、何パーセントの人間が、最低賃金下限に張り付いているか、という割合のことですね。これが高ければ高いほど、その企業の社員の給料がギリギリまで削られて抑えこまれているということです。そして、通常はパートの人が3割張り付いていれば高い方だということです。正社員は1割も張り付いていないことのほうがおおいそうです。

この状態で、ワタミが全員一律に下限に張り付いているとすると、これは相当異常だということですね。しかも、先程も言ったとおり普通の中小企業ではなく「上場企業」なのに!

高邁な理念を憶え込み熟練した接客を要求され日々の業務の改善までをも求められる労働に、飲食は競争が厳しいから最賃で雇っても仕方がないか、という安易な値段付けを許していては、いつか自分の労働の値段も同じ道をたどる

今回のワタミの議論について最大の問題はなにか=市場の健全性が機能していないこと

本当に問題があるのなら、そんな仕事に見合わない賃金しか出さない企業には人が来なくなるはずです。そうして人手不足で淘汰されるというのがあるべき姿。企業としては賃金を上げるか、大手のようにフリンジベネフィットを大きくするかするでしょう。
これまで、そのような本来の姿がなされず最低賃金でも人をかき集められたのは、デフレを続けて失業者というプールを維持しようとする異常な、それでいて最低賃金で人をかき集めたいような企業には万々歳な政策が続けられてきたからに過ぎません。

ブラック企業の何が問題かという問われたなら、なんと答えるでしょうか。そこで、ブラック企業内部の問題をあげようと思ったら色々な要素が出てくると思います。しかし、最大の問題は、ブラック企業自身にあるのではなく、ブラック企業が市場において、しかも上場企業として容認されている市場環境の現状にあるという指摘です。これすごく大事。政府はそれを公認し、経団連も、東証も、リクナビも、学生も、親も、みんなが「仕方がないよ。必要悪だよ。就職しないよりマシだよ」と容認してしまっているか、容認させられてしまっていること。このシステムこそがまずい。

(参考 http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar300510

ブラック企業について議論する際は、一つ一つの企業の問題点を指摘するより先に、まず「問題があったらその企業を是正・排除する仕組みがあるか」をかんがえなければいけないと思います。

ここがしっかりしない限り、いつまでたっても「嫌なら行かなきゃいいじゃん」という堀江貴文氏に代表されるおきまりの反論との殴り合いだけが続き、先に進みません。 大学の奨学金問題と絡めて「ブラック企業でも生きていかなければ生きていけない人たち」が強制的にそこに吸収されていっているということなどを踏まえ、まず「市場」がブラック企業を容認しない、という仕組みを作るよう政府に働きかけることが重要だ、と言う点が共有できるといいですね。


ブラック企業」を駆逐するための基本的方針について


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N1XYOJ6S972Z01.html
実際、ようやく、人手不足による賃上げ圧力が高まりつつあるようです。 ワタミに対しても、倫理的にどうこういうより、「最低賃金を維持しようとしたら、人出が集まらなくて、潰れる」という状況になれば多分対応が変わると思います。

*1:言外の解釈としてはさらに「まして上場している=評価され、認められているなんて」まで踏み込んでるかも?