なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

ergオタによる車輪の下感想 その1

まずはあっさり目に。

主人公のハンスにだけ注目して物語を読むと、学業は優秀だけれど、受身的で、しかも世間擦れしてなくて純粋な感じの少年が、周りの人間の影響で自分の感情にむりやり目覚めさせられ、それに翻弄されている間にあれよあれよと流されて行ってしまうみたいな話のように受け取れてしまいました。
少年が主人公だからいいのかもしれないけれど、少年が精神的にレイプされまくってるような印象であり、微妙にエロい感じがしたのは、多分私の魂が腐っているからだと思います。




車輪の下」の主人公のハンスくん、結構面白いです。




最初は面白くない感じです。優秀だけど、内発的な動機は薄いキャラのように見えます。
周囲の期待に答えて成果を出し、その見返りにひそかな功名心を得ることを喜びにしてるようないわゆる優等生、って感じです。周りの期待に応えるために、好きな釣りを諦めたりしようとするあたり、自分より周りの方が大事というか、自分をあまり強く出せないようです。
周りが与えてくれる名声を失うことを恐れていて、成果がでなさそうだと途端に意気消沈してしまうし、自分の存在価値がなくなったかのように感じてしまう脆さがあります。 




これが、ハイルナーとの、強引に唇を奪われるところから始まった友情(BL?)に目覚めると、それが彼を動かす動機になります。 以前だったら考えもシなかっただろうに、学校に逆らってでもその友情を守ろうとする。 もっとも、この作品においてはハンスくんが目覚めた自分の意思など学校に敵うわけがなく、あっさりその闘いは敗北で終わりますが。それでも、人ってひとつのきっかけでこうまで変わるものだなと驚きます。




それより面白いのが、後半の性欲…というと言い過ぎかもしれないので情欲、を持て余してるハンスくん。エンマとの関係で、恋をすっとばして異性に欲情することに目覚めさせられたハンスくん、エンマにフラれちゃった後、その感情をまた持て余してしまいます。 その結果どうなるかというと、街中で恋人をみつけてはストーキングするというかなり奇天烈な行動を取ってます。 多分、キリスト教とか、時代背景とかとっぱらって、今の日本の舞台でこの主人公を再現したら、オナニーしてる描写とかあったんじゃないでしょうか。



落合尚之さんが「罪と罰」を日本を舞台に再構成したマンガ作品を描かれて、これがべらぼうにおもしろかったので、「車輪の下」も是非誰か挑戦していただけないでしょうか。




それでまぁ最後の展開ですが…。わたし的にはいきなり物語に強制終了させられたように感じました。「な ぜ 殺 た し 」というコメントを付けたい気分です。 もちろん物語的に「この先」は無いのはわかりますが、だからといって殺さんでも。 普通の人は、この状態になってから生きるわけで、私もむしろ、ここから人はどうやって生きるのか、それでも死を選ばなければならないのはどういう事情なのか、とかそういう話を期待していました。 ヘッセ本人のエピソード(ピストル自殺未遂)などを知っていると、かなり肩すかしを食らったような気分になります。 


ここはどう解釈していいのかわからないので読書会での他の方の意見に期待しています。 個人的には、この死にはそれほどあまり深い意味を持たせたくないような気がしますね。



【余談】
昨日の記事では「承認欲求」とか「包摂欲求」の話をしました。私は前からちょくちょくこの言葉について言及してます。ではなんでこれを気にするのかというと自分が、自分の人生にたいして動機レス、とまでいかなくとも動機薄い人間だという自覚があるからです。なんらかの欲求を自分の中に見出して、それを動機として見出したいわけです。恐怖とか、不快を避けることも行動の理由になりますが、できるなら、欲求に駆動されるような生き方に憧れてるわけです。「欲求を欲求してる」みたいな。めんどくさい。



そんなわけで、物語読むときの目的の一つとして、いろんな人の動機とか欲求が呼び覚まされる瞬間とか、それによって人がどう変わってしまうのかを見たいというのがあります。




車輪の下」は、露骨に承認欲求をめぐる話であるようにもみえるし、そこから抜け出すきっかけのようなものも提示してるけれど、最後にブツリと切られてしまうので、消化不良な感じがする