なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

「神のみぞ知るセカイ」と「phantom」

神のみの過去編で結崎香織が出てきたときに「クロウディアさんじゃないか、懐かしい!」と思ったというだけの話。

「神のみ」においては、未来に繋がらない存在で有ることがほぼ確定しているが、それゆえにクロウディアさんの事を思い出すことで「桂馬が香織を選ぶ可能性だってあり得ない訳じゃなかった(天理がいなかったら…)」とか妄想してみたい。

ついでにphantomでいえば「ちひろ、ハクア、天理、エルシィ」の位置づけはどうなるだろう、と言うことも考えてみたり。



phantom

phantomは息が長いコンテンツ。

初出は2000年2月25日で、AIRと同じくらいの時期なのだけれど、長く売れ続け、何度もリメイクされている。2010年には10周年記念ということでアニメ化され、さらに2013年8月30日に最新版のPC版リメイクが出されている。ライターの虚淵さんの人気の影響もあるとはいえ、未だに市場で通用してるのが凄い。(それだけギャルゲ業界が進歩してないと言うことかもしれないが・・・)

この作品の人気が長続きしているのは、もちろん魅力的な世界観だとかストーリーの巧みさもあるのだろうけれどこの作品で登場したヒロインの「格の拮抗」みたいな要素も大きいのではないかと思う。そのあたりも「神のみ」の現在の均衡状況を思い起こさせる。

http://www.phantom-r.jp/character/index.html

この作品は三部構成になっている。

1部 普通の日本人学生だった主人公が「暗殺組織」に取りこまれ、
   暗殺者として生きていくことを余儀なくされ、組織に染まっていく

2部 組織に適応したかに見えた主人公が、様々なイベントの中で葛藤し、
   組織に対する自分の在り方を決める(訣別・復讐)

3部 2の「訣別ルート」の後で、組織と決別した後の生き方を選ぶ。(最終ヒロイン選択)
  


ヒロインは4名。


①誘惑者
 クロウディアは、暗殺組織の幹部。
 女性でありながら幹部に上り詰めるため、冷徹で非情で計算高い生き方を続けてきた。
 反面、非情に孤独を感じており自分のパートナーを求める心が非情に強く、
 主人公の才能や意志を見いだし、支援するだけでなく自分のパートナーとして求める。


②攻略対象(メインヒロイン)
 アインは主人公より前から暗殺組織にいた少女。
 暗殺組織において主人公の教育係であったが、
 逆に主人公の影響を受け、共に組織を抜けるルートも存在する。
 1~3部通して主人公の側に立ち、最も主人公と長い時間を共にする。



③パートナー
 キャル(ドライ)は、主人公と同じく一般人であったが
 2部で、主人公と関与し、やむを得ない事情で暗殺組織に巻き込まれる。
 暗殺組織に巻き込まれても主人公のことを恨まず、むしろ慕っていたが、
 2部ラストで主人公がアインとともに暗殺組織と訣別する際に組織に置き去りにされる。
 3部では主人公に対する異常なまでの執着を見せる。



④逆攻略キャラ
 藤枝美緒は(諸事情あるものの)最初から最後まで一般人。
 暴力的なセカイにおいては無力な存在だが、
 主人公の暗殺者としての在り方を否定し、普通の人間として生きる可能性を提示することで
 主人公の「現実」への帰還のよりどころとなる。
 受け身のように見えるが、自らの意志で主人公を「攻略」しようとする唯一の存在。



この4人、それぞれが排他的でなく絡んでおり、かつどのルートに行っても納得性が高いというバランスで成り立っている。ヒロインの格においてどのキャラも拮抗している。今から考えても凄いな、と思う。



「神のみキャラ」を「phantom」で見てみると…

神のみの主人公の桂馬は「理想のセカイ」に、自らの意志で立っているのに対し、phantomの主人公のツヴァイは「絶望のセカイ」に、やむなく立っている。「普通の人間としての生き方=現実」に背を向けた存在であるという点は共通している。しかし、ツヴァイにとって「普通の人生」や「別のセカイ」が魅力的で有るのに対して桂馬はそうではない。


④タイプ
実際に「現実に戻ろう」みたいな呼びかけをした長瀬純に対しては、桂馬はかなり辛辣な対応を返している。単に「藤枝美緒」と同じことを言っても桂馬には届かない。④タイプは、桂馬にとってのヒロインになるためには何らかの変化が必要になる。


①タイプ
結崎香織は、クロウディアによく似ている。月夜や長瀬純にもその傾向があったが「現実に絶望し、現実を自らの理想の通りに作り替えたい」という欲望を最も強く表明しているのが香織である。そして、その為にパートナーとして桂馬を求める。
「現実には絶望しているが、自分は正しい」と思っているという点でも桂馬との心理距離はじつは結構近い。(月夜や純は、自らの無力さゆえに、現実から逃避の逃避として理想に逃げ込むという要素が強く、桂馬とは大きく隔たっている、ちひろなんかも攻略前はこの要素があった。)ただ、自分を肯定し、それを保つために「現実をわざわざ作り替えなければならない」弱さを持つ点は、普段の桂馬には遠く及ばない。

ただし、過去編においては、桂馬は相当心が弱っている状態であり、自らの無力さ、限界を思い知ったところであった。全てが「理想のセカイ」だけで完結できないことを自覚しつつあった。それ故に、香織に取り込まれるというか、彼女をパートナーにする可能性もあった。実際にphantomでは、主人公がクロウディアを選び、その意志を引き継ぐルートがあったわけだ。これがギャルゲなら、そういう選択肢があっても良かったような気がする。

こう考えると、過去編における天理の行動は、いかにファインプレイであったか、あらためて実感させられる。(構図が、月夜編における桂馬の行動と類似しているのが面白い)



②と③ポジションの奪い合い
あとはちひろ、ハクア、エルシィ、天理当たりについて考えてみる。

ちひろは設定的には④のポジションにしかなれない存在である。しかし女神編における位置づけは完全に③である。桂馬の心情や立ち位置を直感的に理解し、トレースするような行動を取っている。この行動あってこそ、④として成功する芽も生じる。何も知らない長瀬が頭ごなしに「現実に帰れ」といったのとは訳が違う。 
桂馬の立場を受け止めた上で、「逆攻略」を仕掛けることが可能な状態を作っている。桂馬の戦いを直接サポートできない弱みはあるけれど「攻略じゃなくても恋愛できる」というポジションを作っている点ではかなり優位。*1


ハクアは純粋な③のポジション。というか和解後のキャルそのものという感じがある。しかし、最初からすんなり成長しているゆえに、物語上でキャルほどの感情の強さを感じないのがちょいと弱いかも。キャルの場合は、主人公を殺したいと思うほど憎み、主人公を越えるべく自らを極限まで鍛え上げたという経緯があり、それと比べるとやはりちまたの評価「チョロい」感がして弱く感じる。でも、女神編での伸び具合は凄かったからこの先大逆転の可能性もある。



エルシィは、元来②のポジションであったはずなのだけれど、非情に弱い。というかそのポジション完全に天理に奪われている感じがする。女神編では蚊帳の外、過去編でも桂馬とパートナーとして活躍しているのは天理。これはもうエルシィが④の「藤枝美緒」ポジション、つまり見守るだけのヒロインになってないですか?と。それはともかく1巻で存在が示されていた「優秀なお姉さん」はいつになったら出てくるのでしょうか。



そして天理。②③④すべての要素を網羅し、どの要素でも強い。総合力では最強。個別ヒロインとしてはキャラが弱い方だったのに、女神編でも過去編でも崩れかかった桂馬を支え、全ての物語の基礎を二人で一緒に作り上げる。攻略対象でないが桂馬が好きであることを伝え、それがある程度受け入れられている。もうほとんどバランスブレイカー的な強さを発揮している。 *2


まとめ

あんまり綺麗に纏まらなかった…。 

最初はもっとピタっとはまる構図になるかな、と思ったけど実際に考えてみるとやはりかなり違っているな、と思い直しました。 同じニトロプラスつながりで、今の過去編の構造は「デモンベイン」とも似てる気がしたりして、ギャルゲーマーとしてとてもワクワクする展開になっています。

*1:俺妹でいえば黒猫。ネギまでいえば長谷川千雨…はちょっと言い過ぎだなうん

*2:俺妹でいえば眼鏡な幼なじみさんの上位互換Verと言っても良い感じ。ネギまの千雨はむしろこちらか