なろう原作マンガの感想など

歴史漫画のまとめを作るはずだったのに、いつのまにかなろう原作マンガの感想ばっかりになってしまった

湯浅比呂美は一度死んで生き返る的な話

湯浅比呂美を中心にtrue tearsを見ると、「氷点」の陽子を思い出す。

芯が強く明るく素直、慈悲深く自己を律する模範的な性格の持ち主。独立心が強く努力家でもある一方で、人に対して頑なで、気性の激しい一面も見受けられる。肩まで垂らした黒髪、生き生きとした何かが絶えず燃えている様な瞳の魅力的な美人で、伸びきった美しい肢体や物腰から声音まで実母に酷似している。幼少期は形のいい濃い眉が偶然にも佐石とそっくりであった。読書と勉強が好きで幼少期から一貫して学業に優秀。養父母を除いた周囲の人々から純粋に愛され慕われている。

true tears作品中での湯浅比呂美は
「氷点」ではなくむしろ「続・氷点」において描かれる陽子に印象が近いかもしれない。

自殺未遂を起こした後、自分自身の罪と向き合う様になる。自殺を図るまで他人を憎む事に否定的だったが、出生の事実を知った後、実母の恵子と夏枝を疎むようになる。

true tearsは陽子を「石動乃絵」と「湯浅比呂美」に分断させた作品かも知れない。




さすがに読んだのは10年以上前なのであんまり中身は覚えてないんだけど
湯浅比呂美が追い詰められるプロセスを見てこの昔の作品を思い出すくらいだから
多分雰囲気は似ていたはず。


「幸せな時間・空間」がある時裏返って自分をじわじわと絞め殺す空間にかわり
自分を否定するエピソードばかりが積み重ねられていく。
それに耐えようとするが、心はタナトスの方向に引っ張られていく。

表題の「氷点」は、何があっても前向きに生きようとする陽子の心がついに凍った瞬間を表している。その原因は、単に継母にひどい仕打ちを受けたという表面的なものではなく、人間が生まれながらにして持つ「原罪」に気付いたことであると解釈される。

8話のバイク炎上を見ながら
「きれい・・・」とつぶやくシーンは評判が悪いが私はここ大好きだ。

作中最後の場面で陽子は、夕日に照らされた真赤な流氷を見ながら、人間の罪を真に「ゆるし」得る存在について思いを馳せる。

*1
このシーンのあと、湯浅比呂美はいろんなものを断念する。
赦したかどうかまでは分からないが、執着は捨てようとしている。
それによって、前を向こうとする。生きる方向に歩み始める。

この変化が美しくて、憧れる。私に必要だけど、出来てないことだから。



石動乃絵が、内面に深く入り込んでもはや自分の意思と区別がつかなくなった祖母の呪いと戦う様も美しいが、私個人としては「過去を手放す」中に「赦し」が含まれている湯浅比呂美の変化の方がより一段上だと思っている。

でもここもあんまり描写サれてないので、あくまで自分がそう想いたいだけかもしれない。



ちなみにこれと似たような展開でもう一つ思い出したのが
「贖罪の教室」というゲームに出てくる七瀬というキャラ。
ただ、true tearsはここまで人を悪意の塊とみなしているわけではない。
この作品はマジで人間関係がグロイので、本当の意味で鬱ゲーがやりたい人いオススメ。

*1:true tearsにおける象徴表現について」を読むと、白い雪は乃絵ということであり、私もその意見に同意するので、バイク事故から純と比呂美を守った白い雪の背後に乃絵の姿を見るなら、少しKanonを思い出さないこともない